ドゥーマーとドゥエマー、モロウウィンドとモロウィンド、ヴィヴェクとヴィベク。The Elder Scrolls(TES)の記事を書いていると、同じ語の別の表記に毎日のようにぶつかります。
最近、シリーズの固有名詞を英語から一度に引ける表を作り、語ごとに当サイトの表記を決め直しました。音としてはこちらが正しいと分かっているのに、もう定着してしまった語で、何度も手が止まりました。今回はそんな語の扱いについての雑記です。
ドゥーマーとドゥエマーはどちらが正しい?
音だけで比べるなら、正しいのはドゥエマーの方だと思います。Dwemer はドワーフとも呼ばれる、ある日こつぜんと消えたエルフの民で、Skyrim と Oblivion の日本語版はドゥーマー、ESO の日本語版はドゥエマーと書きます。
ゲームの文章を数えると、Skyrim はドゥーマーが 211 行、ESO はドゥエマーが 1,332 行で、ESO にドゥーマーは 1 行もありません。Skyrim の方には、本の中にドゥエマーが 1 行だけ紛れています。
発音については、開発者のマイケル・カークブライド(Michael Kirkbride)が何か言っていた記憶があって、調べたら本当にありました。カークブライドは Morrowind の世界を作った一人で、1999 年 2 月に Redguard のフォーラムへ「How to Say it All」という投稿を書いています。[1:13][2:43]
そこでは Dwemer は DWAY-mare と書かれています。[2:46]mare はナイトメアのメアなので、字のとおりならドゥエイメアで、語尾をほかの種族名にそろえればドゥエイマーです。どちらにしても、ドゥエマーの方がだいぶ近いです。ドゥーマーの長い「ウー」は、どこから来たのか分かりません。
同じ投稿には、ほかの語の発音も並んでいます。[2:49]
| 語 | 投稿に書かれた音 | 公式の表記 |
|---|---|---|
| Dwemer | DWAY-mare | ドゥーマー/ドゥエマー |
| Dunmer | doon-MARE | ダンマー |
| Altmer | AHLT-mare | アルトマー |
| Bosmer | BO-mare | ボズマー |
| Chimer | KY-mare | チャイマー |
| Daedra | DAY-druh か DEE-druh | デイドラ |
こうして並べると、話はドゥーマーだけで済みません。Dunmer の発音はドゥーンメアに近く、ダンマーに近い DUHN-merh はコロヴィアの田舎者の発音で、人数しだいでダークエルフに笑われるか殴られるそうです。[2:47]
Bosmer に s の音は無く、Chimer はカイメアです。[2:48,50]Daedra も、ダンマーの好みはディードラの方です。[2:51]音の正しさで直すなら、ダンマーもボズマーもチャイマーもデイドラも全部動かすことになります。
もっとも、これは開発者の遊びも混じった掲示板の書き込みで、ゲームの決まりではありません。英語の音声でも発音は揃っていないようで、Skyrim では DWEH-mer と DWAY-mer の両方を聞いたという話があります。Redguard のカジート J’ffer の発音が DWEE-mare だったと指摘された時も、カークブライドの返事は「無知な獣人だから」でした。[2:63,67]
コメントする
音が近いドゥエマーに直せばいいのでは?
定着した表記は、どちらへ寄せても定着した側の人が違和感を覚えるので、ドゥエマーに直すのも悪手です。Skyrim で覚えた人にとって、ドゥエマーは見慣れない誰かの言葉です。ESO から入った人には、ドゥーマーの方が間違いに見えます。
どちらの読者も、音の根拠を読んで納得するより先に、文章の途中で 1回つまずきます。書く側としては、記事の中身より先に表記が気になる事態をいちばん避けたいです。
モロウウィンドとモロウィンドも同じです。公式の日本語はどの作品もモロウウィンドで、ゲームの文章にモロウィンドは 1 行もありません。
ただ Morrowind 本編には日本語版が出ていなくて、発売前の国内の紹介記事はモロウィンドと書いていました。[3]公式の表記が広まるより前から、モロウィンドで覚えた人がいるわけです。こちらは公式がそろっているのでモロウウィンドで書いていますが、ウの続く字面に引っかかる人は今もいると思います。
Vivec はもっとややこしくて、ESO と Skyrim がヴィベク、Oblivion がヴィヴェック、当サイトは Morrowind 日本語化も含めてヴィヴェクです。公式の中で割れていて、どれを選んでも誰かの字面と違います。音はヴィヴェクが近いので残しましたが、ヴィベクで覚えた人には、当サイトの方が変な表記に見えているはずです。
コメントする
結局どの表記で書くのか
結局は多数派に寄せるしかなくて、当サイトの表記はドゥーマーのままです。多数派といっても、ゲームの文章の行数なら ESO のドゥエマーが Skyrim のドゥーマーの 6 倍以上あります。
ただ人の数は別で、TES の名前を Skyrim で最初に覚えた人が多いと思います。これは数えた話ではなく、書いていての実感です。
決め直した語の中から、公式と当サイトが分かれる語を並べました。
| 英語 | ESO | Skyrim | Oblivion | 当サイト |
|---|---|---|---|---|
| Dwemer | ドゥエマー | ドゥーマー | ドゥーマー | ドゥーマー |
| Vivec | ヴィベク | ヴィベク | ヴィヴェック | ヴィヴェク |
| Aedra | エドラ | エドラ | エイドラ | エイドラ |
| Temple | 聖堂 | 聖堂 | 神殿 | 神殿 |
| Skaal | スコール | スコール | スコール | スカール |
| Adamantine | アダマンチン | アダマンチン | アダマンチン | アダマンティン |
上の 4 語は、公式が割れているなら動かさないという理由で残しました。聞こえはいいのですが、ドゥーマーもエイドラも神殿も、私が育った訳です。ESO の訳が新しくても手が勝手にドゥーマーと打つので、公平に比べたとは言い切れません。
下の 2 語は公式が全部そろっているのに、当サイトだけ違います。こちらは育ちだけでなく、公式の表記そのものに引っかかって直した語です。
コメントする
公式がそろっていても直す語はどれか
英語に対して定番のカタカナになっていない語は、公式がそろっていても、当サイトではしっくりくる表記に直しています。TES の日本語はけっこう機械的に作られてきた歴史があって、公式でも同じゲームの中で表記が揺れています。
ドゥーマーの遺跡の名前がいい例です。ESO の中だけでも、頭の Nch の音は 3 通りあります。Nchuand-Zel はヌチュアンド・ゼルで、Nchuleft はヌシュレフト、Nchurdamz はンチャルダムズです。
Skyrim の Nchardak に至ってはチャルダックで、N ごと消えています。当サイトの Morrowind の記事は Nchuleft をンチュレフトと書いていて、これでさらに 1つ増やしてしまいました。
Skaal も、スコールでは雨のように聞こえますし、発音は明らかにスカールです。ESO のスコールも、単に過去作に合わせただけかもしれません。
公式の日本語は、あまり大きく作り直さない傾向にあるように見えます。Oblivion Remastered の日本語も旧版の訳が土台で、City-Swimmer、直訳すれば街を泳ぐ者という名前のアルゴニアンは、今もトビウオ師匠のままです。[4:19]
単純に、定番から外れた読みが振られたままの語もあります。Trueflame の公式はトゥルーフレームですが、日本語で flame といえばフレイムで、フレームだと枠に見えます。アダマンティンも、公式の表記に違和感があって直した語です。
もちろん、ファイヤーかファイアーかのように派閥のある話なので、一概にどれが正解とは言えません。定着した側の人間が逆側に覚える違和感は、私の中にもあります。多数派に寄せるしかないと書きながら、自分の中の定着には勝てていないわけです。
コメントする
公式に合わせておけば楽なのでは?
公式に合わせれば迷わずに済みますが、違和感のある表記まで定着を後押しすることになります。有志の日本語化は昔から、公式の表記に合わせるか、無理に日本語にせずカタカナのままにしておくのが無難なやり方でした。
ただ、ここまで書いてきたとおり、定着した表記はあとから動かせません。誤訳に近い語でも、有志の訳まで同じ表記でそろえば多数派になって、動かせない語がまた 1つ増えます。カタカナのままにするのも、音をなぞっただけの語は意味が届かないまま読み飛ばされがちです。
なので当サイトは Morrowind の日本語化も記事も、読みやすさと英語とかけ離れすぎないことを見ながら、ときにはがっつり直しています。公式でブレがある語は、併記して一言添えることもあります。どこまで直すかは語ごとに悩むしかなくて、正しい発音がはっきり決まってくれれば楽なのですが。
コメントする
正しい発音はいつか決まるのか
作中の学者の間でも、ドゥエマーの言葉の発音は決まっていません。ESO には、学生のアマドリ・ドレヴィンが書いた『ドゥエマー語の正しい発音』という本があります。意見の合わない学者たちの議論に付き合わされた学生が、仲間のためにまとめたガイドです。[5:2]
酒を 1 杯飲んだら、すべすべした小石を 4 個から 7 個口に含み、母音を省いて子音を足して話すのが正しい発音だそうです。[5:8]最後はこう締められています。「おめでとう。ドゥエマー語を正しく発音できたはずだ。」[5:11]
音の正しさにこだわった学者の行き着く先が小石なら、私はもう少し育った訳に甘えてもいい気がします。明日もたぶん、ドゥーマーと打ちます。
参考文献
- UESP「Michael Kirkbride」 行13
- マイケル・カークブライド「How to Say it All」(Redguard のフォーラム、1999 年 2 月。写しは Redguard Forum Madness) 行43,46~51,63,67
- 4Gamer の Morrowind の紹介記事
- UESP「City-Swimmer」 行19
- アマドリ・ドレヴィン『ドゥエマー語の正しい発音』(How to Pronounce Dwemer Words。ESO の本) 行2,8,11





















コメント