ロア(lore)とは、The Elder Scrolls(TES)シリーズの世界の歴史・神話・神々などの設定のことです。出どころによって二つに分けて扱われます。
- 公式ロア:ベセスダが出した作品に載った設定です。Skyrim の棚に並ぶ本や NPC の台詞、ゲームに付いた冊子、公式の小説がこれにあたります。
- 非公式ロア:開発者が個人として掲示板やファンサイトに書いた文章です。英語圏の TES 事典 UESP の呼び方で、Unofficial Lore を略して UOL とも書きます。
TES の解説では、公式ロアと非公式ロアが区別されないまま紹介されることがあります。「夜空の星は、エセリウスという光の世界に開いた穴」という説明がその一例です。この考えのもとは1999年に開発者が掲示板へ書き込んだ文章で、Skyrim の本には書かれていません。ゲームの本や台詞に出てくるのは、2014年に出た ESO からです。
公式と非公式を分ける基準は、ベセスダの発言と UESP の決まりで示されています。分類を決めるのは、書いた人ではなく、どこで発表されたかです。同じ開発者の文章でも、ゲームに載れば公式ロア、掲示板に書けば非公式ロアになります。
創世神話そのものの中身は、暁の時代の記事で書いています。
公式ロアと非公式ロアを分ける基準
基準をはっきり示したのはベセスダです。2006年の第3回 Oblivion ファンインタビューで、掲示板でのロールプレイや『第五紀からの恋文』のような文章が公式かどうかを問われました。開発者は、ゲームに載ったものだけが公式だと答えています。
“Elder Scrolls のゲームの中で出たものだけを、公式のロアとみなすべきだ”
※現実の資料:2006年の第3回 Oblivion ファンインタビュー(ギャビン・カーター、トッド・ハワード、ピート・ハインズの回答。UESP「Unofficial Lore」に引用)より
(only things that have been published in Elder Scrolls games should be considered official lore)
ただしその後、ゲームではない小説『The Infernal City』(2009年)と『Lord of Souls』(2011年)も、正典として認められています。ESO のクリエイティブ・ディレクターだったポール・セージも、ファンとの質疑で非公式ロアを ESO で扱うかを問われ、ゲームで遊べたかどうかを基準に挙げています。
“私たちのロアの扱い方では、それが真であるためには、これまでのゲームで実際に遊ばれたものでなければならない”
※現実の資料:ESO のクリエイティブ・ディレクター、ポール・セージのファン質疑での回答(UESP「Unofficial Lore」に引用)より
(The way we approach our lore is for it to be true it has to have been something that was actually played in the other games.)
英語圏の TES 事典 UESP は、この考え方をもとに、事典で使う資料を三つに分けています。公式の資料、開発者が書いた非公式ロア、それ以外の人が書いた文章です。
公式の資料は記事の土台になります。非公式ロアは、ゲームの内容を説明する助けになるときだけ使い、注も「UOL」と断った別の枠に分けます。開発者でない人の文章はファンの創作とみなし、事典に載せません。
- 公式ロア
- ゲーム:Arena から Skyrim までの本編や ESO に出てくる本、台詞、クエスト
- ゲームに付いた冊子:説明書や『帝国のポケットガイド』
- 公式の小説:『The Infernal City』『Lord of Souls』
- ロアマスターズ・アーカイブ:ESO の運営が、作中の人物の名で読者の質問に答える連載。答えは公式、読者の質問の文は非公式ロアに入る
- 作中の人物が答えるインタビュー:在職中の開発者が、作中の住人として答えを書いたもの
- 非公式ロア
- 掲示板の書き込み:カークブライトの『宇宙論』(1999年)や、神話の登場者に役を割り振った投稿
- 手紙や漫画:『第五紀からの恋文』(2005年)、漫画『C0DA』(2014年)
- ゲームの本の草稿:ゲームに入る前の『モノミス』の掲示板の書き込み
- 開発者としての質疑:ESO の開発チームが海外の掲示板サイトで答えた質疑(2014年)
- どちらにも入らないもの
- 開発者でない人の文章:ファンの創作とみなされる
UESP は、開発者が書いた非公式ロアのなかでも、ゲームの資料どうしの食い違いを解く文章を重く見ています。ただし、非公式ロアだけを根拠に事実として言い切ることは避けるとしています。非公式ロアは公式ロアを説明する補いであり、それだけで設定を決めるものではない、という扱いです。
非公式ロアの書き手とテンプル・ゼロ
非公式ロアを書いた開発者は一人ではありません。UESP は、マイケル・カークブライト(Michael Kirkbride)、ケン・ロルストン、カート・クールマン、ローレンス・シックらの名を挙げています。中心になったのは、Morrowind の書物を数多く手がけたカークブライトです。文章の多くは作中の本や手紙の体裁で書かれ、ゲームに入らなかった原稿や、次の作品の予告として出たものもあります。
カークブライトは、掲示板に文章を出すとき、テンプル・ゼロ・ソサエティ(Temple Zero Society)という作中の学者の団体の名前を使いました。この名前を表紙に掲げた小冊子まで作られています。

この団体の名前は、ゲームの本にも出てきます。Morrowind から Skyrim まで置かれた『種たるもの』の末尾の注記で、別の書き手がテンプル・ゼロの「学者」をからかっています。
“もちろん、テンプル・ゼロのいわゆる「学者」たちは、町の名前がLの字で始まるというだけの理由で、この話が「ロルカーン」と何か関係があると言い出すだろうが。”
『種たるもの』刊記(古代ドゥーマー物語 第二話/Morrowind・Oblivion・Skyrim)より
(Of course the so-called “scholars” of Temple Zero will probably claim this story has something to do with “Lorkhan” simply because the town starts with the letter L.)
UESP も、テンプル・ゼロ・ソサエティを作中の団体として、公式の事典の側に項目を立てています。団体の名前はゲームの本に載ったので公式ロアですが、その名義で掲示板に書かれた文章は非公式ロアのままです。
『帝国のポケットガイド』は第2版だけが非公式ロア
同じ題の資料が、出た場所によって別の分類になることもあります。タムリエルの各地方を紹介する案内書『帝国のポケットガイド』(Pocket Guide to the Empire)は、第1版から第3版のうち、第2版だけが非公式ロアです。
| ポケットガイド | 出た場所 | 分類 |
|---|---|---|
| 第1版 | Redguard(1998年)の説明書に収められた冊子 | 公式ロア |
| 第2版 | ベセスダの掲示板の共同企画(未完) | 非公式ロア |
| 第3版 | Oblivion(2006年)のコレクターズ・エディションの冊子 | 公式ロア |
三つとも、帝国地理学会という作中の団体が書いた体裁をとっています。第2版は、カークブライトとテンプル・ゼロの会員がベセスダの掲示板で進めた企画で、完成しませんでした。第3版の序文には第2版があったことが書かれていますが、第2版の本文はベセスダの作品として出ていません。題も書き手の名義も同じでも、ベセスダの作品として出たかどうかで分類が分かれます。
作中の人物が答えたインタビューは基準によって扱いが分かれる
判断が割れるのは、開発者が作中の人物として答えたインタビューです。1999年2月、ファンサイトの書き手が、モロウウィンドの住人に話を聞いたという体裁のインタビューを載せました。住人たちの答えを書いたのは、カークブライトとケン・ロルストンです。これが「People of Morrowind」で、答えの著作権はベセスダにあると記されています。
UESP は、在職中の開発者が書いた作中の体裁のインタビューを、公式の資料として引いてよいとしています。ロアマスターズ・アーカイブも同じ扱いです。これに対して、ESO の開発チームが2014年に海外の掲示板サイトで答えた質疑のように、開発者として答えたものは非公式ロアに入ります。
ただし、ベセスダの2006年の答えに照らすと、このインタビューはゲームに載っていません。作中の体裁のインタビューは、ベセスダの基準ではゲームの外、UESP の基準では公式の資料という境目にあります。
よく知られた三つの設定の分類
解説でよく取り上げられる三つの設定を、ゲームで確かめられる部分と、そうでない部分に分けると次のようになります。三つとも公式ロアに手がかりがあり、細かい説明は非公式ロアか作中の体裁のインタビューから来ています。
| 設定 | ゲームで確かめられること | ゲームにないこと(出どころ) |
|---|---|---|
| 星は空に開いた穴 | 星はムンダスに開いた穴(ESO の本と台詞) | 大きな星は裂け目が大きいだけ(『宇宙論』) |
| エナンティオモルフ | 名前、王とその分身、双頭の王(『三十六の教訓』) | 目を失う証人などの役(カークブライトの投稿) |
| タロスとアークタス | 二人が「一つになろう」と誓う(Oblivion の預言者) | 二人の超魂がタイバー・セプティム(作中のインタビュー) |
星を穴とする考えはESOで公式ロアに入った
星を穴とする考えのもとは、カークブライトが1999年8月にベセスダの公式掲示板へ書き込んだ『宇宙論』(Cosmology)です。テンプル・ゼロ・ソサエティの名義で、星や惑星のしくみを一問一答で説明しています。
星々はエセリウス(魔法の次元)への橋である。それらは空間の内側の面に開いた穴として知覚される。……大きな星ほど定命の世界に近いのではない、ただオブリビオンに開いた裂け目が大きいだけである。オブリビオンに開いた最大の裂け目が、太陽たるマグナスである。
(The stars are the bridges to Aetherius, the magic plane. They are perceived as holes on the inside surface of space. … Larger stars, therefore, are not closer to the mortal plane, they are just larger tears in Oblivion. The largest tear in Oblivion is Magnus, the sun.)
※現実の資料:『宇宙論』(テンプル・ゼロ・ソサエティ名義/インペリアル・ライブラリに現存)より
ゲームの側にも、宇宙論の本の跡が残っています。Morrowind の本『無礼の少ない歌』(A Less Rude Song)は、ゲームの中の識別名が bk_istunondescosmology(イストゥノンデの宇宙論)になっています。宇宙論と題した本を入れる予定があり、完成版で別の本に差し替えられた跡と見られています。ただし、掲示板の『宇宙論』がその本の原稿だったかどうかは分かっていません。
ゲームの本では、Oblivion から ESO まで入っている『天空からの魔法』が、星を「エセリウスとのつながり」と書いています。エセリウスは、魔法の力の源とされる光の世界です。ただし、この本は星を穴とは書いていません。
星を穴とする記述がゲームに出てくるのは ESO からです。ESO の本『タムリエルの祠』は、星がムンダス(定命の者が住む世界)に開いた穴であることを、誰もが知ることとして書いています。
“誰もが知るとおり、天の星々はムンダスに開いた小さな穴であり、そこからエセリウスの魔法の光が差し込んでいる”
『タムリエルの祠』(ESO)より
(As all know, the stars in the heavens are perforations in the Mundus through which shines the magical light of Aetherius.)
ESO では、作中の人物も同じ考えを語ります。エルデンルートにいるボズマーの語り部ギルナリンは、太陽と星をマグナスたちが夜の壁に穿った穴だと語ります。ネードの星の神官だったナーランも、星を「エセリウスの光をこの世界へ通す小さな窓」と信じていたと話します。
“星々はエセリウスそのものです。いえ、正確には ──太陽と星は、ニルンから逃れようとしたマグナスと、ほかの精霊たちが、夜の壁に穿った穴なのです。その穴がエセリウスの光をこの世界へ通している”
ESO、エルデンルートの語り部ギルナリンの語りより
(They are Aetherius. Rather, the sun and stars are holes pierced in the wall of night by Magnus—and other spirits—seeking to escape Nirn. These holes permit Aetherius’ light to enter our world.)

星を穴とする考えそのものは、ESO から公式ロアに入っています。一方で、大きな星は世界に近いのではなく裂け目が大きいだけ、という説明は『宇宙論』にしかありません。ESO の三か所は、学者の本の前置き、ボズマーの言い伝え、ネードの古い信仰と、どれも作中の人物の言葉として出てきます。
エナンティオモルフは名前が公式で役の割り振りが非公式ロア
エナンティオモルフ(Enantiomorph)は、もとは化学の言葉で、右手と左手のように同じ形なのに重ならない一対のことです。TES の解説では、二人が一つのものをめぐって争って片方が裏切り、決着を見届けた証人が目を失う、という型として紹介されます。
ゲームの本にあるのは、この語と断片的な像です。ヴィヴェクの説話集『三十六の教訓』(Morrowind)は、第二十九説話の数の一覧の二番目にこの語を挙げますが、意味は書いていません。第十一説話には「統べる王」とその「分身」が、第十九説話には「双頭の王」の幻が、第三十五説話には「五番目の歩む道」が出てきます。
“シャーマットは彼の分身である。だからおまえは、自分が何も統べていないのではないかと訝る”
『三十六の教訓』第十一説話(Morrowind)より
(The Sharmat is his double, and therefore you wonder if you rule nothing.)
裏切りを伴う一対や、目を失う証人という役の割り振りは、ゲームの本には書かれていません。もとは、カークブライトが掲示板に書いた投稿で、アヌアドの神話の登場者に役を割り振ったメモです。
“ニル(女/土地/自由。エナンティオモルフの生と死をもたらす触媒)/アヌ=パドメイ(裏切りを必ず伴うエナンティオモルフ)/?(見届ける盾の従士。盲いるか傷を負うことで、揺らぎを一つの形に固める。盲いる・傷を負う=最後の決定)”
※現実の資料:マイケル・カークブライトの投稿「Mythic relationships」(年不明。UESP「Michael Kirkbride’s Posts」に収録)より
(Nirn (Female/Land/Freedom catalyst for birth-death of enantiomorph)/ Anu-Padomay (enantiomorph with requisite betrayal)/ ?* (Witnessing Shield-thane who goes blind or is maimed and thus solidifies the wave-form; blind/maimed = = final decision))
カークブライトが2005年に掲示板へ出した『第五紀からの恋文』も、死を越えた状態に至る試みを六つ並べ、その五番目にエナンティオモルフを挙げています。UESP は、この並びをもとに「五番目の歩む道」をエナンティオモルフにあてていますが、同時に、この手紙はふつう根拠として扱われない文章だと断っています。名前と断片は公式ロアにあり、それを一つの型として説明する部分は非公式ロアから来ています。
タロスとアークタスの超魂の名は作中のインタビューから
Skyrim で信仰が禁じられているタロスについては、「タロスとズーリン・アークタスが一つになった」と語られることがあります。二人が一つになる話そのものは、ゲームの中にあります。Oblivion の追加コンテンツ Knights of the Nine で、預言者がこう語ります。
“そしてタロスはアークタスに言った。「一つになろう。この玉座を、この地を、この民を固めるために。天の下で、そのどれもが輝くように!」“
預言者の台詞(Oblivion『Knights of the Nine』)より
(And Talos said to the Arctus, “Let us join as one to fortify this throne, this land, these people, each one glorious under heaven!”)
二人をエナンティオモルフと呼び、その超魂(二人が合わさった一つの魂)をタイバー・セプティムとしたのは、先に挙げた「People of Morrowind」です。ポート・テルヴァニスに住む人間という体裁で、開発者が答えています。
“真鍮の神を二番目に見たのはエナンティオモルフだった。個々には、ズーリン・アークタスとタロスとして知られているだろう。その超魂は、世にタイバー・セプティムとして知られた“
※現実の資料:1999年2月19日のインタビュー「People of Morrowind」(マイケル・カークブライト、ケン・ロルストン)より
(The second to see the Brass God was the Enantiomorph. You may know them individually as Zurin Arctus and Talos. The Oversoul was known to the world as Tiber Septim)
ゲームの中にも、Knights of the Nine の預言者が「赤い宝石が近くにある。超魂が語っている」と叫ぶ台詞はあります。けれど、タロスとアークタスの超魂をタイバー・セプティムと呼ぶ記述はありません。二人が一つになる話は公式ロア、その超魂の名は、ベセスダの基準ではゲームの外、UESP の基準では公式の資料という分類になります。
『モノミス』は掲示板の書き込みからゲームの本になった
ゲームの本のなかには、掲示板の書き込みから作られたものもあります。Morrowind の『モノミス』と『注釈付きアヌアド』です。
どちらも、カークブライトがファンサイトの掲示板に書き込んだ長い『モノミス』から来ています。書き込みを丸ごと載せたファンサイトの管理人が、次の注記を残しています。
“実のところ、この本をマイケル・カークブライトがエッセンシャル・サイトに投稿したものから受け取ったとき、この本は四つの大きな本に分かれていた“
※現実の資料:『モノミス』2002年の書き込みに残る、ザナサーズ・ライブラリの注記(UESP に現存)より
(Actually, when we received this book from the posts made by Michael Kirkbride on The Essential Site, this book separated into four big books.)
注記の四つの本は、『モノミス』と、ハイエルフ、シロディール、ヨクダの創世神話のことです。ゲームでは、三つの神話は『モノミス』の中の章になりました。早い時期の書き込みにはアイレイドの「アヌアド」の章もあり、ゲームでは『モノミス』から外されて、『注釈付きアヌアド』という別の本になっています。
書き込みそのものは消えましたが、ファンサイトのページが Wayback(昔の Web ページを保存するアーカイブ)に残っていて、ゲームの本と一行ずつ比べられます。大きく変わった所を表にまとめました。
| 掲示板の書き込み | ゲームの本 | |
|---|---|---|
| 神々が出入りする所 | リンボの裂け目 | 時の外 |
| 二人の混ざった血から生まれたもの | 宇宙の骨 | エイドラ(善にも悪にも傾くという説明つき) |
| 民ごとの神の対応表 | 「アカトシュはサタカル」など | 無い |
一つ目は、神々が出入りする所です。書き込みでは、神々は「リンボの裂け目」という通り道を出入りし、惑星が並んだときにパドメイがそれを開いて戻ってきました。ゲームの本では、これが「時の外」に書き換えられています。
二つ目は、アヌとパドメイの混ざった血から生まれたものです。書き込みでは「宇宙の骨」でしたが、ゲームの本ではエイドラになり、次の説明が足されています。
二人の混ざった血はエイドラになった(それゆえエイドラは善にも悪にも傾く力を持ち、創造と何のつながりも持たないデイドラより、この世のことに深く関わるのである)。
(The mingled blood of both became the Aedra (hence their capacity for good and evil, and their greater affinity for earthly affairs than the Daedra, who have no connection to Creation).)
『注釈付きアヌアド』(Morrowind)より
エイドラは、Skyrim の祠で祝福をくれる九大神のような神々です。デイドラは、アズラやモラグ・バルのように別の領域に住む神々です。エイドラが善にも悪にも傾くという説明は、ゲームに入るときに書き足されたものです。
三つ目は、民ごとの神の対応表です。『モノミス』の序文は、どの民の神話にも竜の神と不在の神の型があると書いています。
“アヌとパドメイのように、これらの神々の顔ぶれのどれにも、竜の神と不在の神の原型がある”
『モノミス』(Morrowind・Skyrim)より
(Like Anu and Padomay, though, every one of these pantheons contains the archetypes of the Dragon God and the Missing God.)
竜の神は、Skyrim でドラゴンボーンに力を授けたとされるアカトシュのような神です。ところが、ゲームの『モノミス』のヨクダの章には、竜の神にあたるのがどの神かが書かれていません。書き込みでは、章の頭に対応表がありました。
【ヨクダ版】アヌはサタク、パドメイはアケル、アカトシュはサタカル、ロルカーンはセプ。
(Anu as Satak, Padomay as Akel, Akatosh as Satakal, Lorkhan as Sep.)【アイレイド版】奇妙なことに、この伝説ではアカトシュとロルカーンが、その根源であるアヌとパドメイとして描かれている。
※現実の資料:Wayback に残る『モノミス』の掲示板の書き込み(2001年頃)より
【シロディール版】ロルカーンはシェザール。
(Akatosh and Lorkhan are, oddly enough, portrayed through their primal sources in this legend as Anu and Padomay. / Lorkhan as Shezarr)
「アカトシュはサタカル」の対応はゲームの本から消えたので、非公式ロアにだけ残っています。公式ロアだけを読むと、序文の言い切りとヨクダの章がかみ合わないように見えるのはこのためです。UESP の決まりでも、ゲームの本の草稿は非公式ロアに入ります。
UESPで分類を見分ける手がかり
UESP の記事では、公式ロアと非公式ロアが同じページに並ぶことがあります。見分ける手がかりになるのは、ページ名、注の枠、根拠に挙がった本の中身です。
- ページ名の頭:「Lore:」で始まるページは公式の資料と事典の項目、「General:」は非公式ロアと現実の資料です。ただし「People of Morrowind」のように、General にあっても公式の資料として引かれるものもあります
- 注の枠:非公式ロアを根拠にした注は、「UOL」の断り書きの下に別の枠でまとめられます
- 根拠に挙がった本の中身:根拠に挙がった本に、同じことが書かれていない場合があります
根拠に挙がった本の例が、UESP のマグナスのページです。「彼の離脱が穴を裂き、それがニルンの太陽となった」という一文に四冊の本が根拠として挙がっていますが、四冊とも、マグナスが穴を開けたとは書いていません。太陽を穴とする記述があるのは、ESO のギルナリンの台詞と『宇宙論』です。
公式と非公式の区別は真偽の区別ではない
公式と非公式を分けているのは、ベセスダの作品として出たかどうかです。書かれた内容が正しいかどうかではありません。
公式ロアの本も、作中の人物が書いた資料です。ESO のロアを担ったローレンス・シックや、ESO の開発を率いたマット・ファイアーは、作中の書き手が「信頼できない語り手」であることの大切さをたびたび語っています。公式ロアで確かなのは、その資料が作中にあることまでで、書かれた内容が作中の事実だとは限りません。
非公式ロアは、ベセスダの作品ではないので、設定として確定していません。それでも、星の穴のように十数年後に公式ロアに入ったものがあります。逆に「アカトシュはサタカル」のように、ゲームの本に入るときに削られて非公式ロアに残ったものもあります。二つの間の線は、新しい作品が出るたびに動いてきました。
ある設定の確かさは、二つの点で分かれます。どの作品に載ったかで公式か非公式かが決まり、作中の誰が書いたかで、その記述がどこまで当てになるかが決まります。
参考文献
引用した文の原文は、英語圏の TES 事典 UESP と、Wayback に保存されたページで読めます。訳はすべて当記事によるものです。
- 分類の基準
- ゲームの本と台詞
- ゲームに付いた冊子とロアマスターズ・アーカイブ
- 作中の体裁のインタビュー
- 非公式ロア
- 『宇宙論』(Cosmology)
- マイケル・カークブライトの投稿集(Michael Kirkbride’s Posts)
- 『第五紀からの恋文』(Loveletter From the Fifth Era)
- 『帝国のポケットガイド』第2版(Pocket Guide to the Empire, Second Edition)
- 『モノミス』掲示板の書き込み(The Monomyth, 1999 draft)
- 『モノミス』掲示板の書き込み(The Monomyth, 2002 draft)
- ザナサーズ・ライブラリのページ(Wayback に保存)
- 漫画『C0DA』
- ESO の開発チームの質疑(ESO Writing Team AUA、2014年)
- 事典のページ










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