
Morrowind で先祖の墓に入ると、裂けた肉に骨と金属の突起を刺したままの死体が歩いてきます。これがボーンウォーカーです。[1:5]ところが、この墓を建てたダンマー(モロウウィンドのダークエルフ)の地では、死者の体や魂を動かし操ることは死霊術として死罪にあたります。[2:14]
死霊術を禁じる人々の墓に、なぜ動く死体が立っているのでしょうか。この記事では、ボーンウォーカーがどんな亡者で中にいるのは誰かを確かめてから、ダンマーがそれを死霊術と呼ばない理由と外の人の見方を比べます。最後に、神殿の時代に先祖の墓がどう変わったかと、神の教えに出てくるボーンウォーカーを、Morrowind の本と台詞から解説します。
ボーンウォーカーとは?|祖先の墓を守るためダンマーが作る肉の亡者
ボーンウォーカーは、ダンマーが聖なる儀式で作り、モロウウィンドの先祖の墓を守らせている、肉の残った亡者です。[1:5,8]Morrowind の本『死者の軍団』によると、肉のある亡者は西方ではゾンビと呼ばれ、モロウウィンドではボーンウォーカーと呼ばれます。[3:3]その体では、魔法が肉の残骸を骨と霊とともに保っています。[3:3]
体は大きく裂けた傷と、骨と金属の鋭い突起に覆われています。[1:5]この突起は、ボーンウォーカーをこの世に縛りつける儀式で使われた物で、見分ける目印にもなります。[3:3]下顎に三つの宝石をはめたボーンウォーカーもいて、これは古くからの魔術の作法です。[4:6]体に刺さった物そのものが、儀式でこの世に留められた印です。
墓に番人がいることは、墓の呼び名にも表れています。古いダンマーの言葉で先祖の墓はカードルーンといい、「ルーン」は家や炉辺の間、「カード」は去らざる血族の番人を意味します。[5:16]先祖の墓は、初めから死んだ一族が番をする家として名付けられていたのです。
上級ボーンウォーカーやボーンロードとの違いは?|大きく強い肉の亡者と霊の力で動く骨
Morrowind の先祖の墓では、ボーンウォーカーのほかに名前の似た亡者にも出会います。上級ボーンウォーカーは同じ肉の亡者の大きく強い形で、ボーンロードは霊の力で動く骨の亡者ですが、どちらもボーンウォーカーと同じく、ダンマーが先祖の墓に置く番人です。[6:74][7:5]墓で会う 4つの亡者の違いは次のとおりです。
| 名前 | 体 | 作中の姿 |
|---|---|---|
| 下級ボーンウォーカー | 肉のある亡者 | アンドラノ家の先祖の墓にだけ出る、いちばん弱い形[8:13] |
| ボーンウォーカー | 肉のある亡者 | 墓の番人の基本の形。呪いで持久力と筋力を下げ、病気の褐色腐敗症をうつす[9:88,89,103] |
| 上級ボーンウォーカー | 肉のある亡者 | 大きく強い形。呪いは倒しても消えない[1:10][9:89] |
| ボーンロード | 肉の無い骨の亡者 | 4本の腕と浮かぶ頭骨を持ち、骨より霊の力で動く。普通の武器では傷つかない[7:4][3:4] |


Morrowind では、祖霊もスケルトンも、ボーンウォーカーもボーンロードも、みな一族の墓を守る者として説明されます。[10:41][6:70,72,78]墓の番人は、霊・肉・骨のどの形でも現れるのです。その違いは倒し方に出て、肉のあるボーンウォーカーは普通の武器で傷つきますが、霊の祖霊は付呪か銀の武器でなければ傷つかず、霊の力で動くボーンロードにも普通の武器は通じません。[3:2,3,4]
コメントする
ボーンウォーカーの中にいるのは誰?|一族を守る務めを果たす祖先の霊
ダンマーの考えでは、ボーンウォーカーの中にいるのは一族を守る聖なる務めを果たす祖先の霊で、術者に縛られて仕える奴隷とははっきり分けられています。[1:8]そう考える下地には、死んだ祖先と生きた一族の近い間柄があります。
モロウウィンドを訪れる外国人のために書かれた手引き『先人とダンマー』によると、ダンマーの霊は死後も残り、祖先の知識と力は、血と儀式と意志で結ばれた一族を助けます。[11:4,32]家ごとに待つ扉と呼ばれる祠があり、オブリビオン(エイドラとデイドラの住む異界)への扉を表します。[11:6,22]家族は祈りや家の報告で祖先を敬い、祖先は知らせや手ほどき、祝福を返して、家の守り手になります。[11:7]つまり祖先は、死んだあとも一族の一員として働き続けます。

遺骸の扱いにも、この務めが表れます。祖先の遺骸をネクロムのような死者の街に葬るのは、家族の最も厳粛な務めです。[11:9]その一方で、大きな名誉と犠牲の印として、自分の遺骸の一部を一族の祠を守る霊の壁(ゴーストフェンス)に残すことを許す祖先もいます。[11:9]遺言で指の骨を一つ残すのがよくある形ですが、例外的には骸骨全体や保存された死体まで壁に縛られ、遺骸が多いほど守りは強くなります。[11:9,10]保存された死体を一族の守りに縛るこの考えは、魔法で肉を保ったボーンウォーカーの姿と重なります。
しかも霊にとって、この世は居心地のよい所ではありません。霊はこの世を冷たく苦く、痛みと喪失に満ちた所と語り、務めと義理のためにだけ訪れます。[11:14]墓に立ち続ける祖先は、それだけで一族のために犠牲を払っていることになります。
ただし、すべての番人が進んで立っているわけではありません。家の祠を守るために意に反して縛られる霊もいて、それは生前に一族へ忠実に仕えなかった者に与えられる運命です。[11:16,19]務めを果たした誇り高い祖霊が、そうした霊を捕らえて縛るのを手伝うこともあります。[11:19]縛られた霊はたいてい狂って恐ろしい守り手になり、儀式によって自分の一族の者は傷つけられませんが、よそから入った者には極めて危険です。[11:20]
作中の本は、墓のボーンウォーカーの中にいるのが自ら務めを負った祖先なのか、罰として縛られた霊なのかを書き分けていません。『死者の軍団』は、すべてのボーンウォーカーを邪悪で危険と書いています。[3:3]墓に踏み込む者から見れば、誇り高い祖先も狂った霊も、同じように襲ってくる番人なのです。
コメントする
ボーンウォーカーは死霊術?|ダンマーは祖先崇拝と呼び外の人は死霊術と見る
モロウウィンドでは、休戦協定(第二紀の終わりにモロウウィンドと帝国が結んだ和平の取り決め)のもとで、死霊術は「故人の肉体や魂の蘇生と支配」と定められ、破れば死罪です。[12:2][2:14]この言葉どおりなら、祖先の体を動かすボーンウォーカーも当てはまりそうです。ダンマーは一族と神殿の儀式で祖先が務めとして守るのは祖先崇拝で、よその術者が冒涜の儀式で死者を縛るのが死霊術だと分けますが、外の人の多くにはどちらも死体を動かす死霊術に見えます。[1:8]
Morrowind で死霊術について尋ねると、立場ごとに次の答えが返ってきます。
- 学者
ダンマーによれば、死者の体や霊を動かし操ることは、定まった教団の儀式に従えば正しく、世俗の魔術師が行えば違法で忌まわしい[2:16] - 庶民
霊と体の遺骸を聖別して呼び、聖地と一族の財産を守る伝統は、神殿と帝国の法が認め守っている。ダンマー伝統の祖先崇拝は死霊術ではない[2:15,18] - アッシュランダー
(神殿に従わず古い祖先崇拝を守る部族) 死霊術とは、祖先の霊と遺骸を無理に黒い魔術師に仕えさせる魔法で、父祖の骨や霊を冒涜するほどの悪は無い[13:27][2:17]
この線の引き方を、いちばんはっきり書いているのが『冒涜的なレブナント』です。すべての吸血鬼とそれに従う者を滅ぼせと呼びかける本で、祖先の霊が招かれずに一族への愛や務めから現れるのは不浄ではなく、祖先の応えだと書きます。[14:1,2]ところが術者が呼び出せば、それは部族と神殿の前での冒涜で、どれほど焼かれても清められない罪だとします。[14:3]
線は、行いそのものではなく、誰が呼ぶかと本人の意に沿うかに引かれています。アッシュランダーが「無理に」と言うのも同じ線です。同じ本は幽霊も衛士もボーンウォーカーもボーンロードも、冒涜の儀式で呼ばれて力で縛られれば安らぎを得られないと書きます。[14:4]そして、血で一族に、誓いと奉仕で神殿に結ばれた正しいダンマーだけがダンマーの死者の霊を呼べるとしています。[14:5]つまり同じボーンウォーカーでも、一族の者が神殿の儀式で立てれば墓の番人で、よその術者が呼べば冒涜です。
一方、外の人の目にこの区別は映りません。帝国は公式にはダンマーの祖先崇拝を宗教と認めて守っていますが、役人や商人の多くは、内心では野蛮か死霊術めいた物だと思っています。[11:28]人間の文化がダンマーの祖先崇拝を死霊術と結びつけてきたことは、ダンマーの暗い評判の一因にもなりました。[11:26]バルモラの魔術師ギルドにいるオークの治癒師、シャーン・グラ=ムズゴブは、ダンマーが死霊術師を処刑しながら自分たちの死者を呼んで墓と一族を守らせているのを原始的な迷信だと切り捨て、その考えをこう言い表します。[15:9,46]
“聖なる死霊術は正しく、哲学的な死霊術は邪悪だ”
Morrowind のシャーン・グラ=ムズゴブの台詞より(訳は Morrowind 日本語化)
(Sacred necromancy is righteous, while philosophical necromancy is evil.)
シャーンの言う「迷信」に見える理由は、もう一つあります。ダンマーはダンマーやエルフの遺骸に死霊術を使うことは考えもしませんが、人間やオークを動物とみなし、その遺骸や動物・鳥・虫の遺骸への死霊術は禁じていませんでした。[11:27]魔術師の名家テルヴァンニ家は死霊術の達人ですが、ダンマーの遺骸には使いません。[11:30]死霊術師の手引き『死体処理』第1巻は、死霊術が違法なのはモロウウィンドだけなのに、この地では奴隷制のおかげで死霊術師が続けられると書いています。[16:2,4]この見方も時代とともに変わり、のちのダンマーは、認められた種族への死霊術はどれも忌まわしいとみなすようになりました。[11:32]
外の人は死体を動かすという行いを見て死霊術と呼び、ダンマーは誰が、誰の死体を、本人の意に沿って動かすかを見て祖先崇拝と呼びます。ボーンウォーカーが死霊術かどうかは、どちらの物差しで測るかで答えが変わるのです。
コメントする
祖先の墓はどう変わった?|骨はゴーストフェンスへ回り家族の墓は廃れた
ダンマーの信仰は、トリビュナル(ヴィヴェク・アルマレクシア・ソーサ・シルの 3 柱の生ける神)が現れてから大きく変わりました。祖霊の神性は薄められ、民を今の地へ導いた預言者ヴェロスや、民をまとめた英雄ネレヴァルのような大事な祖霊は、聖人とされました。[13:13,15,18]墓も例外ではありません。トリビュナル神殿は祖先の骨の大半をレッドマウンテンを囲む偉大なるゴーストフェンスに回させ、家族の私的な墓を利己的と諫めたので、休戦協定のあと家族の墓に新しく葬られる者はほとんどいなくなりました。[11:32][17:8]
偉大なるゴーストフェンスは、レッドマウンテンの火口を囲む巨大な盾の壁です。ブライトとコープラスという病の怪物を山の一帯に閉じ込めるために作られ、[17:2]柱がトリビュナルの聖なる力と死者の霊を通して、破れない障壁にしていました。[17:2]壁には、神殿とインドリル家・レドラン家の多くの英雄の骨が組み込まれています。[11:11]

『先人とダンマー』の出版者の注は、この変化を書き留めています。祖先の遺骸の大部分が壁に回されたため、一族の祠を守る小さなゴーストフェンスはモロウウィンドにほとんど残らず、家ごとの待つ扉の手入れも廃れました。[11:32]今のダンマーの多くは、地元の神殿にある祖先の遺骸のごく一部を敬っています。[11:32]祖先の骨は、一族の墓の番人から、ダンマー全体を守る壁の番人へ回されたのです。
Morrowind でプレイヤーが入る先祖の墓は、こうして新しく葬られる者の減った、古い一族の墓にあたります。シャーンはプレイヤーに、アンドラノ家の先祖の墓からレヴール・アンドラノの頭骨を取ってくるよう頼み、ダンマーは許しの無い墓の訪問をひどく嫌うと念を押します。[15:28]その墓には、ここにしかいない下級ボーンウォーカーが立っています。[8:13]墓に踏み込むプレイヤーこそ、番人たちが待ち受けてきた侵入者なのです。
コメントする
神話のボーンウォーカーとは?|ヴィヴェクに剣を渡さなかったモラ家の墓の番人
トリビュナルの 1 柱ヴィヴェクにまつわる知恵の言葉を集めた本にも、ボーンウォーカーは出てきます。[4:1]『三十六の教訓:第二十二説話』では、モラ家の先祖の祭壇の壁から現れたボーンウォーカーが、メファーラとの取り決めを理由にヴィヴェクへトレジャー・ウッド・ソードを渡さず、ヴィヴェクは下顎の宝石に口づけしてそれを退けます。[4:4,6,7,8]
ヴィヴェクは、「第二の怪物」と呼ばれた剣トレジャー・ウッド・ソードを探して、モラ家の先祖の祭壇に現れます。[4:2,4]壁から出てきたボーンウォーカーは、下顎に三つの宝石をはめていて、その一つはオパールでした。[4:6]ボーンウォーカーは神に頭を下げながらも、剣は家を離れない、デイドラの 1 柱である黒き手のメファーラと取り決めを交わしたのだと答えます。[4:6,7][13:18]
ヴィヴェクは一つ目と二つ目の宝石に口づけしては、それぞれに「下れ」と命じ、最後にオパールに口づけして「汝を下らせよう」と言います。[4:8,13]そのあとヴィヴェクは暗殺者の集団モラグ・トングの母たちを妻に迎え、剣は暗殺者の王から差し出されました。[4:14,15]
説話のボーンウォーカーは、神に頭を下げながらも、一族が結んだ取り決めを盾に家の宝を手放しません。宝石を一つずつ鎮められて初めて退く姿は、儀式の道具でこの世に留められた墓の番人そのものです。Morrowind の墓で襲ってくるあの亡者も、どこかの一族が今も家を守らせている祖先なのかもしれません。あなたが開けた墓の扉の向こうにいたのは、本当にただの敵だったのでしょうか?
コメントする
よくある質問
コメントする
参考文献
記事で引いた本と台詞の原文は、次のとおりです。番号の後ろの「行」の数字は、引いた一文へのリンクです。
- UESP「Bonewalker」 行4,5,8,10
- UESP「Generic Dialogue N」 行14~18
- 『死者の軍団』(Legions of the Dead。Morrowind の本) 行2~4
- 『三十六の教訓:第二十二説話』(36 Lessons of Vivec, Sermon 22。Morrowind・ESO の本) 行1,2,4,6~8,13~15
- UESP「Generic Dialogue H」 行16
- UESP「Vala Catraso」 行68,70,72,74,78
- UESP「Bonelord」 行4,5
- UESP「Lesser Bonewalker」 行13
- UESP「Undead」 行88,89,103
- UESP「Bestiary A」 行41
- 『先人とダンマー』(Ancestors and the Dunmer。Morrowind・Skyrim・ESO の本) 行4,6,7,9~11,14,16,19,20,22,26~28,30,32
- UESP「Armistice」 行2
- UESP「Ancestor Worship」 行13,15,18,27
- 『冒涜的なレブナント』(Blasphemous Revenants。Morrowind・ESO の本) 行1~5
- UESP「Sharn gra-Muzgob」 行9,28,46
- 『死体処理 第1巻』(Corpse Preparation v I。Morrowind の本) 行2,4
- UESP「Ghostfence」 行2,8
- UESP「Generic Dialogue B」 行111






















コメント