
Morrowind や Skyrim の本、ESO の物語を追っていると、「ドラゴンブレイク」という語に出会います。時の流れが壊れる現象のことで、TES の歴史には、時が 1,008 年も壊れていたとされる中期の暁(Middle Dawn)という時代があります。
ところが、その間に何が起きたのかを本に聞くと、帝国の中心シロディールは星々の帝国になったと言う者もいれば、卵になったと言う者もいて、話がまったく合いません。[1:2]過去と未来を記すはずの星霜の書でさえ、この時代を読もうとすると字が消えてしまいます。[1:2]
この記事では、Morrowind から Skyrim・ESO までの本と台詞をもとに、ドラゴンブレイクの意味、中期の暁で起きた事、否定の説、ほかの時の乱れとの違いを、確かな事と説に分けて解説します。
ドラゴンブレイクとは?|時が一本の線でなくなる現象
まずは言葉の意味から見ていきます。私たちが「時」と聞いて思い浮かべるのは、昨日の次に今日が来て、今日の次に明日が来る、一本の線のような流れです。TES の世界でも、ふだんの時はこの形をしています。ドラゴンブレイクとは、一本の線だった時が壊れて、線でなくなる現象です。[2:3]
名前の「ドラゴン」は、九大神の長で時を司る竜の神アカトシュのことです。[3:17][2:3]つまり「時の竜が壊れる」という意味の呼び名です。
英語は Dragon Break で、ESO の日本語版はドラゴンブレイク、Skyrim の日本語版は「ドラゴンの突破」と訳しています。
では、時が線でなくなると何が起きるのでしょうか。いちばん大きいのは、原因と結果の順番が保てなくなることです。
たとえば、結末が分かれるゲームの全部の結末が、同時に本当になった状態を考えてみてください。[4]ある国が勝った話も負けた話も、どちらも起きたことになります。
ふだんの時と比べると、次のようになります。
| 比べる所 | ふだんの時 | ドラゴンブレイクの中 |
|---|---|---|
| 昨日の次に今日が来る | 来る | 限らない |
| 原因のあとに結果が来る | 来る | 限らない |
| 食い違う出来事が並ぶ | 並ばない | 並ぶ |
| あとで話が一致する | 一致する | 一致しない |
- ふだんの時は、昨日の次に今日が来る一本の線です。
- ドラゴンブレイクが起きると、線がほつれて何本にも分かれます。
- 線ごとに別の出来事が起き、どれも本当になります。勝った話も負けた話も、同時に並びます。
- やがて、時は一本の線に戻ります。
- ほつれていた間の話は、食い違ったまま記録に残ります。
ただし、この状態がいつまでも続くわけではありません。縄の繊維がほつれても、先へ行くとまた一本に束ねられるように、時はやがて線に戻ります。[5]それでも、ほつれていた間の話は、食い違ったまま残ります。[1:2]中期の暁の証言が合わないのは、このためです。
こんな事が起こりうるのは、TES の時がもともと固い物ではないからです。世界ができたころの暁の時代(Dawn Era)は、神々が歩くだけで時の連続さえ揺らぐ時代でした。[6:9]ドラゴンブレイクの混乱は、この暁の時代の混乱の繰り返しです。[2:3]
言い換えると、世界がまだ固まっていなかったころの状態へ、いっとき戻るようなものです。長さと範囲は毎回違い、千年を超えた例も、数日で終わった例もあります。[2:3]
コメントする
ドラゴンブレイクはいくつある?|全土が知るのは中期の暁だけ
現象の形が分かったところで、実際の例を見ていきます。TES の歴史には、ドラゴンブレイクではないかと語られる出来事がいくつかあります。名前が挙がるドラゴンブレイクは四つあり、全土の民が知っているのは中期の暁だけです。[2:5]
残りは起きた場所が限られるか、起きたこと自体が推測です。四つを並べると次のようになります。
| 名前 | 時期 | 原因 | 長さと範囲 | 確かさ |
|---|---|---|---|---|
| 中期の暁 | 第一紀 1200〜2208 年 | 塔の杖の儀式 | 1,008 年・全土 | 全土の民が知る |
| リメンの起動 | 第二紀 896 年 | ヌミディウムの最初の起動 | 分からない | 本が触れるだけ |
| 西の歪み(Warp in the West) | 第三紀 417 年 | ヌミディウムの 2 度目の起動 | 3 日間・イリアック湾 | 報告書が残る |
| 赤の瞬間(Red Moment) | 第一紀 700 年ごろ | ヌミディウムの起動とされる | 分からない | 推測 |
表を見ると、どの例にも共通点があります。どれも、人が神の事柄に手を出した場面なのです。[2:3]つまり、神だけが扱うはずの力を人が動かしたときに起きています。ドラゴンブレイクは嵐のようにひとりでに来る物ではなく、人の行いが招く災いです。
コメントする
中期の暁とは?|1,008 年続いた最長のドラゴンブレイク
四つの中でいちばん長く、この記事の中心になるのが中期の暁です。中期の暁は、第一紀のアレッシア教団の一派が塔の杖で起こした、1,008 年続いたとされるドラゴンブレイクです。[2:5]
この文に出てくる語と時期を、先に押さえておきます。
- 第一紀
TES の歴史は「紀」という大きな区切りで数え、第一紀はその最初の区切りです。Skyrim の舞台より 3,000 年以上も前の話になります。 - アレッシア教団(Alessian Order)
第一紀の帝国で大きな力を持った宗教の集団です。奴隷の反乱を率いたアレッシアの名を掲げてただ一つの神を拝み、エルフを強く憎みました。[7:15] - 時期
帝国の議会にあたる元老院(Elder Council)の見積もりでは、第一紀 1200 年から 2208 年までです。[8:16]
マルーカティの選ばれし者は何をしようとした?|アカトシュからエルフの部分を消す儀式
では、その一派は何をしようとしたのでしょうか。一派の名はマルーカティの選ばれし者(Marukhati Selective)で、アレッシア教団の中の精鋭でした。[8:2]マルーカティの選ばれし者は、時の神アカトシュの中のエルフの部分を、儀式で消そうとしました。[2:5]
発端は、アカトシュの正体です。アカトシュは人間の呼び名で、エルフは同じ神をアーリエルと呼びます。[3:17]つまり、一つの神を人間とエルフが別の名で呼んでいる形です。
エルフを憎む一派には、これが我慢なりませんでした。[8:15]人間の神からエルフの色を洗い落とそうとしたわけです。
一派の考え方は、教えを七つの条に書いた短い文書『排除の教令』に残っています。どの条にも 1 番の数字が振られているのは、一つであることを何より重んじ、全部の教えを等しく大事にしたからです。[8:2]
その理屈を順に並べると、次のようになります。
- 時は一本の線である[9:3]
- だからアカトシュも単一の存在である
- そこに混じったエルフの要素は「アルドマーの穢れ」(Aldmeri Taint)である
- 穢れを消せば、アカトシュは純粋な人の神へ戻る[10:3]
アルドマーはエルフの祖先のことです。穢れを消すこの行いを、一派は聖なる抹消(Sacred Expungement)と呼びました。[2:5]
目的が決まると、次はどう実行するかです。手順は、一派の命令書『ドラゴンブレイクの立証』に残っています。書いたのは、第一紀 1188 年に一派の大司教となったフェルヴィディウス・サルンです。[8:12]
儀式の道具に選ばれたのは塔の杖でした。古代のエルフであるアイレイドの魔術師アヌマリルが作った杖で、八つの部分が、世界の形を支える八つの塔に対応します。[11:1]ばらばらに隠されていた八つの破片を、サルンは人を送って集めさせました。[11:2]
命令書は、選ばれし者たちに単一の思考に達するまで詠唱を続けさせ、そのあとの動きを次のように命じます。
“その後は各々踊るがよい。最初は時の流れに沿って、それから逆向きに、時の巻物が時計と逆回りに巻かれるまで。“
フェルヴィディウス・サルン『ドラゴンブレイクの立証』より[10:3][12]
(Then each shall Dance, duration-forward then volteface, till the Roll of Time winds withershins.)
時を巻物に見立てて、逆に巻き戻そうとしたのです。

こうして行われた儀式は、狙いどおりには終わりませんでした。踊りの果てに杖は八つに割れ、時が壊れたのです。[8:16]ここまでの流れは次のとおりです。
1,008 年の中はどうなっていた?|証言が一つも合わない
時が壊れたあと、世界では何が起きていたのでしょうか。いちばん知りたい所ですが、ここが最大の謎です。中期の暁の中で何が起きたかは、証言が合わず、作中のだれにも分かっていません。[1:2]
ふつうなら過去を記す星霜の書を読めば済みますが、読み手の聖蚕の僧侶が巻物を合わせようとしても字が消えてしまいます。頼れるのは、歴代の皇帝の魂が宿る首飾り王者のアミュレットと、各地の証言だけです。[1:2]
そうした証言を集めた本が『ドラゴンの突破の時、どこにいたのか』です。元老院の者が序文を書き、そのあとにダークエルフ・カジート・死霊術師の語り手が、それぞれ「その時どこにいたか」を答える形の本です。[2:8]中身を順に見ていきます。
引用の訳は、当サイトのワードページにある訳です。Morrowind 日本語化の訳語のままなので、本文の「選ばれし者」は「選択者」、「中期の暁」は「中なる夜明け」と出ます。引用の間は〔中略〕でつないでいます。まず、序文を書いた元老院のコラックスは、王者のアミュレットが伝える話と、各地の証言をこう書いています。
“ヘストラによれば、シロディールは星々の彼方に帝国となった。ショール・エルによれば、シロディールは卵となった。〔中略〕評議会は全属州から文書と証言を収集したが、それらはただ一点を除いて決して一致しない物語を提示するのみである。その一点とは:中なる夜明けの間のタムリエルの全民族が、いかなる「いつ」に捕らわれていようとも、八つ星の落下を追跡していたということだ。そして彼らはそうして日々を数えたのである。“
コラックス(元老院)『ドラゴンの突破の時、どこにいたのか』より[13][14]
(According to Hestra, Cyrodiil became an Empire across the stars. According to Shor-El, Cyrodiil became an egg. […] The Council has collected texts and accounts from all of its provinces, and they only offer stories that never coincide, save on one point: all the folk of Tamriel during the Middle Dawn, in whatever ’when’ they were caught in, tracked the fall of the eight stars. And that is how they counted their days.)
皇帝の魂は、帝国になったと言い、卵になったと言います。全属州から証言を集めても、話はそろいません。
ここから、語り手が順に答えます。最初はダークエルフの新神殿の三位の女主人、メーラ・ナビシです。八つの星は、ロルカーンの悪行の数だけ落ちたと言い、人間の側の記録を偽りだと切り捨てます。
“八つ星がタムリエルに落ちた。ロルカーンが世界に明らかにした悪行一つにつき一つずつ。〔中略〕我らにドラゴンブレイクの時にいずこにいたかを尋ねるでない。全世界の中で、真に知るのは我らのみ。そして再びそれを破る方法を汝らに示すかもしれぬのだ。“
メーラ・ナビシ(新神殿の三位の女主人)『ドラゴンの突破の時、どこにいたのか』より[13][14]
(Eight stars fell on Tamriel, one for each iniquity that Lorkhan made clear to the world. […] Do not ask us where we were when the Dragon Broke, for, of all the world, only we truly know, and we might just show you how to break it again.)
本当に知るのは自分たちだけで、もう一度壊す方法も見せられると言い放っています。
次のカジートの語り手は、メインの世話人ル・レイト=ハルルです。1,008 年という数もカジートが記録したものだと言います。
“ル・レイトが教えてやろう。記録していたのだ。「千八年」、聞いたことがあるだろう。〔中略〕貴様らが幻影と戦争をし、自分の父親を産んでいる間、ジャ・カジャイを見守っていたのはメインだった。月こそが唯一の不変なるものであり、貴様らにはそれを見る砂糖がなかったからだ。“
ル・レイト=ハルル(メインの世話人)『ドラゴンの突破の時、どこにいたのか』より[13][14]
(R’leyt tells you where: recording it. ’One thousand eight years,’ you’ve heard it. […] While you were fighting wars with phantoms and giving birth to your own fathers, it was the Mane that watched the ja-Kha’jay, because the moons were the only constant, and you didn’t have the sugar to see it.)
人間が亡霊と戦っていた間も、月だけは変わらなかったので、自分たちは記録できた、という主張です。
最後は、死霊術師たちの長、虫の神マニマルコです。
“私自身については、ドラゴンブレイクの間の他の定命の者たちと同様、あちらこちらに、そして再びここにいた。〔中略〕マルーカティの選択者たちは、我らが学ぶために夜明けの栄光をすべて示したのだ。簡潔に言えば:上の如く、下も然り。“
マニマルコ(虫の神・死霊術師たち)『ドラゴンの突破の時、どこにいたのか』より[13][14]
(As for myself, I was here and there and here again, like the rest of the mortals during the Dragon Break. […] The Maruhkati Selectives showed us all the glories of the Dawn so that we might learn, simply: as above, so below.)
マニマルコは、時が壊れた中をほかの定命の者と同じようにあちこちにいて、そこで奥秘を学んだと明かしています。教えたのは儀式を行った選択者たち、つまり選ばれし者だと言っています。
証言はこれだけ食い違っていますが、一つだけ全員の話が合う所があります。八つの星が落ちたことです。[1:2]どの「いつ」に閉じ込められていても、民は星の落下を見て日を数えました。
砕けた塔の杖の破片がこの星で、時を測れる唯一の手がかりでした。[11:2]つまり、時を壊した道具のかけらが、壊れた時の時計代わりになったのです。
もう一つ気をつけたいのが、1,008 年という数です。ふつうの歴史の年数とは性質が違います。
ドラゴンブレイクの長さは影響の無い場所から測るので、[2:3]守られていたと言い張る民もいます。[2:5]たとえば、ある人には数日で、別の人には百年だったのかもしれません。中の人が 1,008 年を順に過ごしたとは限らないのです。
中期の暁はどう終わった?|星が落ちきって時が戻った
では、壊れた時はどう終わったのでしょうか。手がかりは、さきほどの八つの星です。中期の暁は、八つの破片が地上に落ちきったときに終わったと語られます。[8:16]
一方で、猫の姿の民カジートには別の伝えがあります。カジートの古い文書を伝える『ボエスラの剣の歌 第5巻』です。カジートの戦いの女神ボエスラが、中期の暁の始まりに立ち会う話です。ボエスラが塔の上へ移ると、そこには魔術師たちがいました。
“魔術師の猿たちは、語れば本当になるやり方で嘘を語った“
モデュン・ラ(隠された声)『ボエスラの剣の歌 第5巻』より[15:3][16]
(The sorcerer apes spoke lies in a way that made them true)
魔術師の猿とは、マルーカティの選ばれし者の中にいた、猿の民イムガ(Imga)の魔術師です。[17:14]その言葉は、アカもその子らも初めからいなかったことにしてしまいます。[15:4]ボエスラはその嘘の力を前にしながら、最後は剣で決着をつけます。
“ほどなく、世界はまた正しい時で回り始めた。“
モデュン・ラ(隠された声)『ボエスラの剣の歌 第5巻』より[15:17][16]
(soon after the world began to spin again in proper time.)
世界が回り始める直前に、ボエスラは奇妙な角度で概念を切っています。八つの星が落ちきって終わったという話とは違い、カジートの伝えでは、戦いの女神が切って時を元に戻したことになります。
儀式を行った側は、そのあとどうなったのでしょうか。選ばれし者が目的を果たしたのかは分かりません。[8:19]一派の行方の記録も、教団を終わらせた第一紀 2321 年からの戦争で失われました。[7:35]
この出来事は、後の時代の争いの理由にも使われました。第二紀のエルフの同盟アルドメリ・ドミニオン(Aldmeri Dominion)が新兵に配った案内文が、その例です。新兵の教化を受け持つアイカンターは、ドラゴンブレイクをこう書きます。
“あの災いはすべて人間の過ちだったが、直さねばならなかったのはアルトマーだった。“
アイカンター(教化サピアルチ、シマーリーン)『新しいアルドマー非正規軍にようこそ』より[18:4][19]
(That catastrophe was entirely the fault of Men, but the Altmer had to repair it.)
災いは人間のせいで、後始末をしたのはエルフだという言い分です。案内文はこのあと、帝国の人間がまた失敗したので、女王はドミニオンを作るしかなかったと続けます。ドラゴンブレイクの話が、シロディールを攻める理由に使われているわけです。
一方で、死霊術師のマニマルコはアルトマーの王こそ最初に壊した者だと語っていて、[1:8]だれの責任かという話でも証言は合いません。
言葉の出どころは、先に見た『ドラゴンの突破の時、どこにいたのか』のマニマルコの答えです。マニマルコは、モロウウィンドの三人の盗賊と並べて、アリノールの至高王の名を挙げています。
“モロウウィンドの三人の盗賊なら、彼らがどこにいたかを教えられよう。最初にそれを破った当人であるアリノールの至高王もそうだ。“
マニマルコ(虫の神・死霊術師たち)『ドラゴンの突破の時、どこにいたのか』より[13][14]
(The Three Thieves of Morrowind could tell you where they were. So could the High King of Alinor (isle), who was the one who broke it in the first place.)
コメントする
ドラゴンブレイクは本当に起きた?|否定の本はあるが決着はしていない
ここまで読むと、一つの疑問が浮かびます。これほど話が合わないなら、そもそも起きなかったのではないか、という疑問です。作中にも同じ事を考えた人がいます。学者ファル・ドルーンは作り話だと否定しましたが、その本自身に時の矛盾があり、決着はしていません。
完全な答えは今も無いので、両方の言い分を見ていきます。
ドルーンの本『ドラゴンブレイク再考』は、中期の暁を歴史の誤りとして片づける短い論文です。いちばんの主張は、教団の長さについての次の一文です。
“私の見積もりでは、アレッシア教団が実際に続いたのは約 150 年にすぎない“
ファル・ドルーン『ドラゴンブレイク再考』より[20:4]
(I estimate that the Alessian Order actually lasted only about 150 years)
1,008 年は長すぎる、とドルーンは言います。教団の「一年」は大司祭の幻視の長さで、数週間から数か月しかなかったからです。[20:4]それを、第三紀 12 年に出た歴史の百科事典が暦の一年と取り違えたというのです。[20:3]
分かりづらいですね。では、例え話にしてみます。
ある村の古い記録に、祭りは 1,008 年続いたと書いてあるとします。そのまま読むと、とても長い歴史です。何か不思議な事が起きたのではと思えてきます。
ところが、この村は暦の一年ではなく、祭りを 1回開くたびに「一年」と数えていたとしたらどうでしょう。祭りが年に 7回あるなら、1,008回はおよそ 150 年にしかなりません。長い歴史に見えたのは、数え方の違いだったわけです。
ドルーンの説は、これと同じ形です。村がアレッシア教団で、祭りが大司祭の幻視です。
ドルーンは最後に、話の始まりをこう結びます。
“ドラゴンブレイクは第三紀の終わりに、学者の誤りをもとに作られた話である“
ファル・ドルーン『ドラゴンブレイク再考』より[20:5]
(the Dragon Break was invented in the late 3rd era, based on a scholarly error)
要するに、1,008 年はただの数え間違いで、時が壊れた話は後から生まれたという説です。ヌミディウムへの熱狂と学者の思い込みが、この話を広めたとドルーンは見ています。[20:5]
ところが、この説では説明の付かない物が残ります。材料ごとに、ドルーンの説で説明できるかを並べます。
| 材料 | 説明できるか | 理由 |
|---|---|---|
| 1,008 年という長さ | できる | 暦の取り違えなら、年数の長さは説明が付く |
| 第二紀 582 年の語り | できない | 作り話が生まれたはずの時より前に、話があった[2:8] |
| ダンマーの証言 | できない | 帝国と仲の悪いダンマーも、起きたと認めている[2:8] |
| 『ドラゴンブレイクの立証』 | できない | 儀式の前に書かれた命令書が残っている[2:8] |
さらに、本そのものにも奇妙な点があります。書かれた時代に合わない本が 2 冊あるのです。
- 『ドラゴンブレイク再考』
第三紀 427 年の世界に置かれているのに、まだ先のセプティム朝の滅びを過去の事として書いています。[2:40] - 『ドラゴンの突破の時、どこにいたのか』
第二紀の写しに、ずっとあとの西の歪みが書かれています。[2:39]
2 冊の本と、本に書かれた出来事を時の順に並べると、次のようになります。
時の乱れを否定する本が、時の順番を守れていないわけです。
もっとも、これでドラゴンブレイクの証明になるとは言い切れません。時の乱れが本を過去へ運んだと書いた資料は見つかりません。[21]
ドルーンの説は年数の説明としては通りますが、儀式の命令書が残っている事は説明できません。当サイトは、中期の暁は起きたが、1,008 年という長さは確かめようがないと考えます。
コメントする
ヌミディウムのドラゴンブレイクとは?|動かすたびに時が乱れた
ここまでは中期の暁の話でした。表に出てきた残りの例には、どれも同じ機械が関わっています。古代に姿を消した民ドゥーマーが作り、タイバー・セプティムがタムリエルの征服に使った機械の巨人、ヌミディウムです。[22:7]巨人ヌミディウムは、リメンと西の歪みの 2 度とも、動かしたときにドラゴンブレイクを伴いました。[2:11]
1 度目は第二紀 896 年のエルスウェアの町リメンで、[23:18]第三帝国の前触れとなったと語られるだけで、中で何が起きたかは書かれていません。

記録が多いのは 2 度目の西の歪みです。第三紀 417 年にイリアック湾で起きました。巨人を操るタイバー・セプティムのトーテムを、センチネル・ウェイレスト・ダガーフォール・オルシニウム・帝国が同じ時に手にしたのです。[2:11]
ふつう、一つの物を同時に五者が持つことはできません。それが起きてしまうのがドラゴンブレイクです。歪みが晴れると、湾の周りに 44 あった国は 4つになっていました。[22:2]
この 2 度を、カジートは数えていました。『ドラゴンの突破の時、どこにいたのか』で、メインの世話人ル・レイト=ハルルが、人間に突きつけています。「大いなる歩行者」は、ヌミディウムのことです。
“貴様らは大いなる歩行者で再びやった。一度ではなく、二度も!一度目はリンメンで、我らは決してそれと共に生きることを学べまい。二度目はダガーフォールだった。いや、センチネルか?ウェイレストか?それとも三箇所同時だったか?わかるか、シロディール?貴様らはいつ目を覚まして、ドワーフに本当は何が起こったかを理解するのだ?“
ル・レイト=ハルル(メインの世話人)『ドラゴンの突破の時、どこにいたのか』より[13][14]
(You did it again with Big Walker, not once, but twice! Once at Rimmen, which we’ll never learn to live with. The second time it was in Daggerfall, or was it Sentinel, or was it Wayrest, or was it in all three places at once? Get me, Cyrodiil? When will you wake up and realize what really happened to the Dwarves?)
この出来事には、ゲームの上の理由があります。Daggerfall は選んだ相手で結末が変わる作品で、どれか 1つを本当の結末に決める代わりに、全部が同時に起きたことにしたのです。[22:36]ドラゴンブレイクは、遊んだ人の選択を一つも消さないための答えでもありました。
コメントする
レッドマウンテンの戦いもドラゴンブレイク?|赤の瞬間には確証がない
ヌミディウムが動くと時が乱れるなら、もっと昔の出来事にも同じ事が起きていたのではないか。そう疑われているのがレッドマウンテンの戦い(Battle of Red Mountain)です。レッドマウンテンの戦いがドラゴンブレイクだったという説はありますが、確証はありません。
第一紀 700 年ごろ、いまのモロウウィンドの地で起きた戦いで、ヌミディウムを作ったドゥーマーはこのあと世界から消えました。語り手ごとに話が食い違う戦いでもあります。[2:12]陣営の顔ぶれやドゥーマーの消え方まで合わないので、この戦いでも時が壊れていたのではないかと考えられてきました。[24:36]
説の手がかりは次の 3つです。
- カジートの語り手 『ドラゴンの突破の時、どこにいたのか』で、ヌミディウムで 2 度壊した話のあとに、ドゥーマーに本当は何が起きたのかと問いかけます。[1:6]
- ヴィヴェクの説話 ダークエルフの神ヴィヴェクが説いた『ヴィヴェクの三十六の教訓』に、赤の瞬間の語と、竜のたてがみが折れたという言葉が出ます。竜は時の神の姿なので、時が壊れた例えとも考えられます。[25:7]
- ウルフハース王の歌 ノルドの王の歌をまとめた『ウルフハース王 五つの歌』で、王が兵に、ここがどこか分からないのかと問います。[26:15]
一方で、話の食い違いは、時が壊れなくても説明できます。[27]勝った側が戦いを都合よく語り直せば、同じように話は割れるからです。ヴィヴェクの言葉も例えの多い文で、そのまま記録として受け取ることはできません。ドラゴンブレイクの可能性は残るものの、これだけでは決められません。
コメントする
時の傷とは何が違う?|狭い場所で起きる時の乱れ
ドラゴンブレイクを調べていると、似た語にも出会います。Skyrim の世界のノドの頂にある時の傷(Time Wound)が代表です。どれも時が乱れた跡ですが、同じ物ではありません。時の傷や時の結び目は狭い場所で起きる時の乱れで、世の中の時が線でなくなるドラゴンブレイクとは大きさが違います。[28:2]主な物を比べると次のようになります。
| 名前 | どんな物 | 例 |
|---|---|---|
| 時の傷 | 時が砕けた場所にできる空間の裂け目 | 世界のノドで、古代のノルドがアルドゥインを時の先へ飛ばした跡 |
| 時の裂け目(Time Breach) | 目に見えない小さな時の裂け目 | ジョサジェーが塔の杖で過去を変えようとして増やした |
| 時の結び目(Time Knot) | 同じ時間を繰り返す範囲 | バル・サナーの町が第二紀 582 年まで閉じ込められた |
- 時の乱れには大きさがあります。タムリエルの地図の上で、小さい物から順に見ていきます。
- 時の裂け目は、目に見えないほど小さな裂け目です。ヴァレンウッドの川の島にも開きました。
- 時の傷は、スカイリムの世界のノドの頂のように、1か所に残る跡です。
- 時の結び目は、モロウウィンドのバル・サナーの町を、同じ時間に閉じ込めました。
- ここからがドラゴンブレイクです。西の歪みは、イリアック湾の周りを巻き込みました。44 あった国は 4つになります。
- 中期の暁は全土を巻き込みました。世の中の時そのものが線でなくなったのです。
- 小さな乱れとドラゴンブレイクでは、巻き込む広さがまるで違います。

小さな乱れでも、放っておくと大事になります。時の裂け目が積もると、新たなドラゴンブレイクを起こす渦になりえます。[2:5]
第二紀にはレディ・エドウィグが『ドラゴンブレイクの立証』の儀式をまねて時を戻そうとしましたが、数時間戻しただけで、同じ時間に閉じ込められました。[2:32]まねるだけでも、人の手には余る力だったわけです。
コメントする
Skyrim の結末もドラゴンブレイク?|作中に裏づけは無い
ここまで来ると、もう一つ気になる事があります。自分が遊んだ作品の結末も、ドラゴンブレイクなのかという事です。Skyrim の結末がドラゴンブレイクだという説はありますが、作中に裏づけはありません。[29]
西の歪みが結末の説明に使われたので、ほかの作品にも同じ説明が当てられてきました。Skyrim なら、帝国軍とストームクロークの勝ちが並んでいるという考えです。
ESO については、ゲームディレクターの Matt Firor が 2019 年のインタビューで、作品の時代がドラゴンブレイクの中かと問われて否定しています。[30]ここまでを作品ごとに並べると、次のようになります。
| 作品 | ドラゴンブレイクか | 理由 |
|---|---|---|
| Daggerfall | そう語られる | 全部の結末が同時に起きた西の歪みとして語られる |
| ESO | 否定されている | ゲームディレクターが否定している |
| Skyrim | 裏づけが無い | 説があるだけで、裏づけが無い |
選択が分かれることと、時が壊れることは別の話です。遊ぶ人の数だけ結末があっても、それだけではドラゴンブレイクとは呼べません。
コメントする
一本の時を信じた者はなぜ時を壊した?
最後に、中期の暁へ話を戻します。この出来事でいちばん皮肉なのは、起こした者の信じていた事と、起きた事が正反対だった点です。選ばれし者は時が一本の線だと信じて儀式を行い、その儀式が時を線でなくしました。[31]
教えの中では、時が一本であることこそ、アカトシュが単一である証拠でした。その信仰のための儀式で、証拠のほうが壊れたのです。
この結果は、教えへの反証にもなります。アカトシュが初めから単一なら、消すエルフの部分は無く、儀式は何も起こさなかったはずです。
時が壊れたのは、やはり別の物が編み込まれていて、それを引きはがそうとしたからだとも考えられます。成否が分からない以上、断定はできません。
『ボエスラの剣の歌 第5巻』に出てくる魔術師は、エルフの部分どころか、アカもその子らも初めから無かったことにしようとしています。[15:4]エルフの要素だけを取り除くつもりの儀式は、世界の土台に手をかける行いだったのかもしれません。
時が線に戻った今、タムリエルの人々が祈るアカトシュは、儀式の前と同じ神なのでしょうか?
コメントする
よくある質問
コメントする
参考文献
この記事で引いた本と資料です。
- 『ドラゴンの突破の時、どこにいたのか』(Where Were You … Dragon Broke。Morrowind・ESO の本) 行2,6,8
- UESP「Dragon Break」 行3,5,8,11,12,32,39,40
- UESP「Akatosh」 行17
- r/teslore「Wtf is a dragon break」
- r/teslore「Explain the Dragon Break like I’m 5」
- 『人類の誕生以前』(Before the Ages of Man。Oblivion・Skyrim の本) 行9
- UESP「Alessian Order」 行15,35
- UESP「Marukhati Selective」 行2,12,15,16,19
- 『排除の教令』(The Exclusionary Mandates。ESO の本) 行3
- 『ドラゴンブレイクの立証』(Vindication for the Dragon Break。ESO の本) 行3
- UESP「Staff of Towers」 行1,2
- The Imperial Library「Vindication for the Dragon Break」
- The Imperial Library「Where were you when the Dragon Broke?」
- 当サイトの全訳『ドラゴンの突破の時、どこにいたのか』
- 『ボエスラの剣の歌 第5巻』(The Bladesongs of Boethra, Volume V。ESO の本) 行3,4,17
- The Imperial Library「The Bladesongs of Boethra, Volume V」
- UESP「Imga」 行14
- 『新しいアルドマー非正規軍にようこそ』(Welcome to New Aldmeri Irregulars。ESO の本) 行4
- The Imperial Library「Welcome to New Aldmeri Irregulars」
- 『ドラゴンブレイク再考』(The Dragon Break Re-Examined。Morrowind・Oblivion・Skyrim の本) 行3~5
- r/teslore「No, The Dragon Break Re-Examined in Morrowind doesn’t confirm Dragon Breaks」
- UESP「Warp in the West」 行2,3,7,36
- UESP「Numidium」 行18
- UESP「Battle of Red Mountain」 行36
- 『三十六の教訓:第三十七説話』(36 Lessons of Vivec, Sermon 37。Morrowind・ESO の本) 行7
- 『ウルフハース王 五つの歌』(Five Songs of King Wulfharth。Morrowind・Oblivion・Skyrim の本) 行15
- r/teslore「Is there any in game proof the battle of red mountain was a dragon break?」
- UESP「Time Wound」 行2,4
- r/teslore「Theory: Skyrim is the series’ first intentional dragon break.」
- JeuxOnLine「Interview de Matt Firor, directeur du jeu TESO: Elsweyr」(2019 年)
- r/teslore「The Marukhati Selective were clueless and the Dragon Break was an accident」






















コメント