【TES世界観解説】オブリビオンの動乱と二つの暁 その5|大いなる門

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※この記事には、Oblivionのネタバレを含みます。

はじめに

その4 では、の祠に潜りこんだ囚人が、師を取り逃がし、デイゴンが書いたという『ザルクセスの神秘の書』だけを持ち帰りました。マンカーはとともに楽園へ消え、の町々の外には、新しいが開きはじめています。では、楽園への門を開くには、何が要ったのでしょうか? その5 では、が楽園への門を開くために四つの物を集め、最後の一つのために北の町の外に敵の大いなる門を開かせるまでを物語でたどり、四つの物と大いなる門が何だったのかを解説で読み解きます。

皇帝は死の間際、見知らぬ囚人に、の顎を閉ざせ、と言い残しました。ところがその子マーティンが皇帝として最初に選んだのは、閉じるはずの門を、敵にわざと開かせることでした。門を閉じるために、なぜ門を開いたのでしょうか?

よければ、Oblivion のサウンドトラックを流しながらお読みください。

BGM Through the Valleys – Oblivion Soundtrack

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第五章: 大いなる門

マンカー・キャモランの楽園へ通じる門を開くには四つの物が要り、その最後の一つは、敵が北の町ブルーマの外に開こうとしている門の中にありました。楽園へ去った師を追うには、デイゴンが書いたという黒い一冊を読み解き、そこに書かれた物を一つずつそろえるほかなかったのです。

四つのうち三つは、古い物語とともに、祠や地の底にありました。敵は町の人のふりをして山の上の砦を見張り、門に囲まれた町々は、城壁の内に閉じこもっていたのです。

──シロディールの兵たちよ! わたしと共に、立つか?

夢の中の本

北の山の上に建つブレイズの砦、曇王の神殿の大広間に、一つの机が置かれた。皇子マーティンは東の翼で本を読んで過ごしていた日々を改め、食べるときと眠るとき以外は、その机で祠から持ち帰られた黒い本を読み続けたのである。

ブレイズの総長ジョフリーは「あの邪な本でマーティン様が何をしているのか、分かっておられるとよいが。用心を怠れば、本に何をされるか恐ろしい」と案じた。

マーティンは、この本の邪な力から身を守る術をいくらか知っている、と言って本を受け取っていた。

司祭になったとき闇の術は捨てたが、運命の働きはここにも見える、とマーティンは言った。相談に来た者には「神々は何をも善に変えうる」と信心深く説いてきたが、いずれ自分でも信じられるかもしれない、とマーティンは続けた。

本は、皇子の眠りまで蝕んだ。マーティンは、デイドラの秘術でこれほど危ういものは見たことがないと言い、「夢の中でさえこの本から逃れられない。守りの呪文で持ちこたえられるだろうか」とこぼした。

それでも読み進めるうちに、マーティンはこの本の正体をつかんだ。

“この本は、キャモランの楽園への門であり、鍵でもある。ある意味で、この本こそが楽園なのだ”

マンカーは楽園を作ったとき、口にするのもはばかる闇の儀式で、自分をこの本に結びつけていた。門は外からも開けられるが、そのためにはマーティン自身が一時、本に自分を結ばねばならない。

儀式に要る物は四つあり、本はそれを一つずつ、しぶしぶとしか明かさなかった。

丘の下の二人

そのころ、砦の門番は幾晩も続けて、山道に見知らぬ人影を見ていた。

ブレイズのステファン騎士団長によれば、人影はいつも夕暮れどきに丘の下の古い石の柱、ルーンストーンのあたりに現れた。だがジョフリーは、砦の壁から遠く離れることを禁じていた。

人影の一人は、ブルーマの町に家を持つレッドガードの女、ジャール(Jearl)だった。夜が忙しいジャールは昼まで眠り、二時に昼食をとった。毎日四時には家を出て町を抜け、砦の南東のルーンストーンへ向かった。

同じ家には、ダンマーのサヴェーリ・ファラム(Saveri Faram)が住んでいた。夕方、サヴェーリは地下室の扉から町の下の洞窟を抜けて山へ出て、ルーンストーンでジャールと落ち合った。

ジャールは砦の近くまで忍び寄って夜十時まで見張り、真夜中に洞窟の隠れ家へ下りた。サヴェーリは、朝の六時に床についた。

町の人々は、二人の正体を知らなかった。衛兵隊長のバード(Burd)は、南の旅から戻ったジャールのほかは静かなものだと言っていた。だが囚人から話を聞くと「それは妙だ。確かに一人で戻ったはずだ」と言った。

町の乞食は、ジャールの留守に見たことのない顔が窓からのぞいていたと言った。隣に住む女も、声がするのにジャールしか出入りしないのは妙だと首をかしげた。

囚人が二人を討ち、卓の脇の揚げ戸から地下室へ降りると、『註解』の第1巻と第2巻のそばに一通の命令書が残されていた。差し出し人は、師の娘ルマ・キャモランである。

“お前とサヴェーリは、選ばれし者の位を上がる印として、もっとも大事な務めに選ばれた。セプティムの世継ぎは、呪われたブレイズの巣、曇王の神殿に潜った。師はその破壊を教団の第一の務めとされ、デイゴン卿は、要るものは何でも差し向けてくださる”

命令書は砦の守りと逃げ道を報告せよと命じ、その報告を待って、ブルーマの前の野にできるだけ早く大いなる門を開くと書いていた。大いなる門が開けばブルーマは必ず落ち、砦も長くはもたず、セプティムは罠にかかった鼠になる。

クヴァッチからマーティンを救い出した帝国の密偵には決して手を出すな、と念を押した命令書は、「暁は明けつつある」と結ばれていた。ジョフリーは、脅威は消えたのではなく遅れただけだと言い、ブルーマの女伯爵へ知らせを送った。

五本の蝋燭

密偵の始末がつくころ、マーティンは本から一つ目の物を読み解いた。デイドラの王の血である。

デイドラの秘宝は王の精髄から形づくられ、そこから大きな力を得ているので、秘宝を一つ手に入れればよい。ただし秘宝を得る道はそれぞれの王の教団を通るしかなく、儀式は秘宝の形を呑みこんでしまう、とマーティンは言った。

囚人はシェイディンハルのはるか北、ジェラールの山の高みにあるデイドラの王アズラ(Azura)の祠へ向かった。夜明けか黄昏に祠へ捧げ物をすると、アズラは姿を現して、一つの昔話を語った。

何年も前、五人の信者が一匹の吸血鬼とその眷属を倒したが、五人とも病をうつされた。行く末を知った彼らは、自分たちを吸血鬼の巣に閉じこめたのだという。

「その苦しみが、わたしには重い」とアズラは言い、信者たちに死の安らぎを与えてほしいと頼んだ。囚人は封じられていた巣に入り、五人を眠らせた。

オークの吸血鬼の首には、生皮で一枚の書き付けが結ばれていた。そこには「吸血鬼は我らの手で死んだが、代償は高かった。女神の祠としもべたちの心に、我らを覚えていてほしい」と書かれていた。

“命が終わるのは、運命によってのみ。それがわたしの命で……お前の命でないのは、偶然によってのみ”

囚人が祠へ戻ると、アズラは五人の魂が自由になったと告げた。その犠牲を覚えて祠の上に五本の明るい蝋燭を永遠に灯すと約束し、アズラは自分の星を与えた。

曇王の神殿でアズラの星を受け取ったマーティンは「何を通り抜けて手に入れたかは聞くまい」と言い、「アズラの星……どの物語も語るとおりの美しさだ」とつぶやいた。

眠れない騎士たち

二つ目の物は、神の血だった。神々は秘宝を持たず、この世に姿も現さないが、この難問を解いたのはジョフリーだった。神の一柱となった、タイバー・セプティムその人の血である。

第二紀852年、のちのタイバー・セプティムであるタロス将軍は、北の山の古い城サンクレ・トール(Sancre Tor)でノルドとブレトンの軍を破った。タイバーは勝利でのブレイズの働きをたたえて自分の鎧を与え、ブレイズは、タイバーがアカトシュの祝福を受けたその場所に地下墓所の祠を建てた。

祠はかつて、すべてのブレイズが巡礼に訪れる地だった。

地下墓所の扉には、「ブレイズ総長の権により封ず。タイバー・セプティム治世第三十六年」と刻まれている。

タイバーの時代の最強のブレイズ四人、アレイン(Alain)・ヴァルデマール(Valdemar)・リーラス(Rielus)・キャスナー(Casnar)は、悪の出どころを探りにそこへ降りたまま戻らなかった。四人の生まれはブレトン・ノルド・インペリアル・レッドガードと、ばらばらだった。

地の底で、四人は霧にはばまれて離ればなれになった。そして正体の知れないアンダーキング(Underking)に捕らえられ、死んだあとも地下墓所に縛られたのである。

鎧の祠への通路には、凍える霧の呪いがかけられた。囚人が呪いから解き放った亡霊の一人、キャスナーは、こう問いかけた。

“アレインかヴァルデマールを見なかったか? リーラスは下の間で倒れた。我らは離ればなれに……霧が目をふさいで……いや、あれは夢だった。わたしはいま目覚めている。皇帝への誓いを果たすまでは、休めぬ”

囚人は地の底を巡り、四人を一人ずつ呪いから解き放った。リーラスは「死んでどれほどたつのか分からない。永遠のように思える」と言った。

四人の亡霊が祠の前でひざまずくと、障壁は一つずつ消えた。囚人が鎧を取って地上へ出ると、四人はようやく眠りについた。

鎧を受け取ったマーティンは「セプティムの血はわたしの中に流れているかもしれないが、英雄の魂を持っているのはきみだ」と囚人に言った。鎧は壊さない、要るのはタロスの神の血をほんの少し削り取ることだけだ、とマーティンは約束した。ブレイズはタイバー・セプティムの遺物のことになると司祭並みに気難しいらしい、とも言い添えた。

閉ざされた町々

ブルーマの町の外にも、門が開いた。

ブルーマの女伯爵ナリナ・カーヴェイン(Narina Carvain)はブレイズに助けを求めた。町の人々は、バード隊長と衛兵があの門を閉じられなかったらブルーマもクヴァッチのように滅ぼされるのではないか、と怯えた。

バードは門の前で、閉じなければブルーマはクヴァッチのように煙をあげる瓦礫の山になると衛兵たちに言った。そして「わたしが衛兵隊長であるかぎり、そうはさせない!」と叫んで門へ踏みこんだ。囚人が衛兵とともに門の奥の塔の印石を外すと、門は閉じた。

「この地獄の門は閉じられると分かった。ブルーマは守れる」とバードは言った。

それでもジョフリーは安心しなかった。

オブリビオンのデイドラは数限りないが、ブルーマの衛兵には限りがある。ジョフリーは、深遠の暁がここに大いなる門を開けば町にはもっと強い守りが要ると言い、囚人をほかの町の主たちのもとへ送った。

だが、どの町も同じ目に遭っていた。祠の夜のあと、シロディールの町々の外にも門が開いていた。町の主たちは、自分の町の門が開いているかぎり兵を一人も出そうとしなかった。

南のレヤウィンのマリアス・カロ(Marius Caro)伯爵は「レヤウィンは敵に囲まれている。帝国は何の助けもよこさない。ブルーマは自分の身は自分で守ることだ」と突っぱねた。町の衛兵たちは「次のクヴァッチは出さん」「レヤウィンは独りで立つ」と言い合った。

コロールの伯爵夫人は民に壁の内にいるよう言い、衛兵に備えさせたが、ほかにできることはないと言った。シェイディンハルでは、伯爵の息子が騎士を連れて門へ入ったまま戻っていなかった。スキングラードの伯爵は「わたしが伯爵であるかぎり、メエルーンズ・デイゴンにこの町は渡さない」と言い放った。

ブラヴィルの伯爵は「あの門に衛兵を攻めこませる危険は冒さない。壁を守って、あとは祈るだけだ」と言った。帝都の元老院の長、総書記官オカート(Ocato)の答えも、同じだった。

“ふつうなら、すぐにも一軍団か二軍団をブルーマへ送るところだ。だが、ふつうの時ではないだろう? 何週間もシロディールに兵をと頼んできたが、将軍たちは、軍はすべて手いっぱいだと言う。属州から兵を引けば、政の大混乱になる。すまないが、シロディールの町々には、しばらく自分の身は自分で守ってもらうしかない”

囚人は町から町へ渡り、それぞれの町の外の門を一つずつ閉じて回った。門が閉じると、町の主たちはブルーマへ兵を出した。

焼けたクヴァッチの隊長サヴリアン・マティウス(Savlian Matius)さえ「割ける兵は少ないが、ブルーマを我らの町と同じ目に遭わせてはならぬ」と言って兵を一人送り出した。

ウリエル・セプティムの行方知れずの息子がブルーマに現れ、シロディールじゅうから兵がその旗のもとへ集まっている、という噂が町々を駆けた。

最後の大石

三つ目の物は、大いなるウェルキンド石だった。人の帝国より前にシロディールを治めていたエルフ、アイレイドの都にはどこにも大きな石があったが、何百年のうちに魔術師や秘術使いに一つずつ持ち去られた。

噂では、大石はアイレイドの古い王国の都ミスカルカンド(Miscarcand)の跡にだけまだ残っていた。その大石を求めて、多くの者が命を落としていた。

都の跡には、いまも最後の王の怨霊が出る、とマーティンは言った。大石は崩れた広間の深い闇の中でまだ光っているはずだが、遠くから垣間見た者しかいない。都の跡は、クヴァッチとスキングラードのあいだにある。

囚人が闇の奥で大石を手にすると、広間に最後の王が姿を現した。囚人は大石を抱えて、雪の山の砦へ戻った。

錨の印石

砦に戻ると、大広間ではマーティンとジョフリーが言い争っていた。マーティンは、皇帝の鎧をまとっていた。

「おそれながら陛下、ほかに道があるはずです。危うすぎます!」とジョフリーが言った。マーティンは「危うさは分かっている。わたしはクヴァッチにいた。だが、ほかに道はない」と返した。

「女伯爵は決して承知しますまい」とジョフリーが言っても、マーティンは「承知する。せねばならぬ」と言い切り、総長は折れた。

マーティンは大石を受け取ると「古い物語が語るとおりの美しさだ」と言った。「だが、アイレイドの作った物がみなそうであるように、その美しさは恐ろしい力を隠す仮面だ」と続けた。

脇の印はみなオブリビオンを指すのに中心の印は何にも合わない、と悩み続けた四つ目の物を、マーティンはようやく読み解いていた。大石の対、オブリビオンの門を開けておく石、大いなる印石である。

“きみは気に入らないだろう。ジョフリーも気に入らない。女伯爵は、なおさらだ。大いなる印石は、大いなる門の錨だ。深遠の暁がクヴァッチで開いた門。ここに開いて、ブルーマを滅ぼそうとしている門だ”

マーティンは「クヴァッチでデイドラの攻城兵器の恐ろしい力を見た。それでも王者のアミュレットを取り戻すには、深遠の暁にブルーマを攻めさせるしかない」と言った。砦に残るべきだという声には首を振り、「皇帝になるのなら、そろそろ皇帝らしく振る舞う時だ」と答えた。

代わりに兵を率いると申し出た囚人を、マーティンは押しとどめた。

“クヴァッチで初めて会ったときのことを覚えているか? 神々の計画になど関わりたくない、とわたしは言った。神の計画があるのかどうか、今も分からない。だが、それはどうでもいいのだと気づいた。大事なのは、動くことだ。悪を前にして、正しいことをなすことだ。クヴァッチできみがしたのは、それだった。我らを救ったのは神々ではなく、きみだった。……今度は、わたしが動く番だ”

それでも従うと言う囚人に、マーティンは「頼む、友よ。わたしに要るのはきみの服従ではなく判断だ」と言った。「訳を話すのは、きみに分かってもらうため。そしてきみから女伯爵に話してもらうためだ。あの方はきみより骨が折れるだろう」とマーティンは続けた。

軍議の場は、町のタロスの礼拝堂と決まった。望みの薄い策を練るにはふさわしい場所だ、とマーティンは言った。

礼拝堂の軍議

ブルーマの女伯爵ナリナ・カーヴェインは、ニベンの中心の地に生まれ、アカヴィリの古物を集めている人だった。「北と南の文化のぶつかり合いしか見ない人もいる。だがわたしには、それが織り合わさって強くなる様が見える」と女伯爵は言う。

町の貴族たちは「厳しく冷たいが、何を期待できるかはいつも分かる」と女伯爵を評していた。

囚人から策を聞いた女伯爵は「望みの薄い策ですこと。この……皇子? 皇帝? マーティンは、大いなる印石のためにわたしの町をまるごと賭けると?」と言った。

だが女伯爵は「この戦には望みがないと思っていました。持ちこたえて英雄が現れるのを待つほかに、何ができたでしょう」と打ち明けた。「ブルーマの主は昔から曇王の神殿とつきあってきました。あの方々が誰に仕えるかは存じています」と言って、女伯爵は礼拝堂へ向かった。

衛兵隊長のバードは「正気の策ではない。ブルーマを滅ぼす危険を冒さずに、アミュレットを取り戻す道がほかにあるはずだ」と言った。それでもバードは「わたしは衛兵隊長にすぎない。決めるのは女伯爵だ。どう思おうと、そのご命令に従う」と付け加えた。

タロスの礼拝堂で、女伯爵は「殿下?」と呼びかけて名乗った。マーティンは「いまは堅苦しい礼は要らない。わたしはまだ皇帝ではないし、世継ぎという考えにもまだ慣れていない」と言った。そして「大きな信を求めているのは分かっている。だが、これしか道はない」と続けた。

女伯爵は「あなたの勇者から事情はもう聞いております。用心していては、この戦には勝てません」と答えた。マーティンは「絶望こそが知恵の道となる時を見抜く、まれな才をお持ちだ」と女伯爵をたたえた。女伯爵の答えは短かった。

“ブルーマが落ちれば、帝国もともに落ちる。それでかまいません”

雪の野営

城の前の広場には、町々から来た兵が天幕を張っていた。

アンヴィルの兵は「ずっとジェラールの山々を見たかった。美しいだろう? 何のためにここにいるのか忘れそうになる」と言った。スキングラードの兵は「ここはいつもこんなに寒いのか。オーガの尻も凍るぞ」と毒づいた。

レヤウィンの兵は、ブルーマが安全になりしだい戻れというのがカロ伯爵の命令だと言った。シェイディンハルの兵は「みんな次のクヴァッチになると思っていた」と打ち明けた。コロールの兵は「シロディール一の兵がブルーマを守っているんだ。深遠の暁も手を出せまい」と言った。

焼けた町から来たただ一人の兵、クヴァッチの兵は「クヴァッチを忘れるな。それが俺たちの合言葉だ」と言った。

ブルーマの民兵たちは、本物の兵がもっといればな、とこぼした。

支度が整うと、女伯爵は「バード! 兵を配せ!」と命じた。

皇帝の兜をかぶったマーティンが礼拝堂の石段を下りて通りを歩くと、町の人々が集まって歓声をあげた。マーティンは「戦場がわたしの場所だ。曇王の神殿に隠れている時は終わった」と言った。

大いなる門

町の外の雪原には、すでに門が一つ口を開けていた。マーティンは兵の前に立ち、声を張り上げた。

“シロディールの兵たちよ! 帝国が立つか倒れるかは、今日ここで我らが何をなすかで決まる! デイドラがクヴァッチにしたことを、ブルーマにもさせるのか? 我らの家を焼かせるのか? 我らの家族を殺させるのか? 否! 我らは今日ここに立つ。シロディールのすべてのために! クヴァッチの英雄が奴らの大いなる門を壊すまで、持ちこたえねばならない! あの門から出てくるものは、何であれ討ち果たせ!”

最後にマーティンが「わたしと共に立つか?」と問うと、兵たちはそれぞれ自分の町の名を叫んで応えた。

戦いが始まると二つ目の門と三つ目の門が開き、最後に見上げるほどの大いなる門が口を開けた。

マーティンは兵とともに戦いながら、「アカトシュと竜にかけて!」「クヴァッチを忘れるな!」と叫び、「父の仇だ!」とも叫んだ。

門の向こうでは、巨大な攻城兵器が、門へ向かってゆっくりと歩いていた。皇帝ユリエル七世が死の前に夢に見た、滅びの姿である。

囚人は門をくぐって本塔を駆け上がり、頂の大いなる印石を外した。門は閉じ、半ばまで門から出ていた攻城兵器も、崩れ落ちた。

戦場に戻った囚人に、マーティンは「今日ここで我らは大きな勝利を得た。これでマンカー・キャモランから王者のアミュレットを取り戻す手立てがそろった」と言った。

町の人々は、マーティン・セプティムが初めて真の世継ぎと名乗りを上げたのがこのブルーマだったとは、と語り合った。

やがて北の門の脇には、ブルーマの救世主をたたえる像が建った。

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解説 ──四つの物と大いなる門

楽園への門を開く四つの物との外に開いた大いなる門には、遊んでいるだけでは見えない古い物語と門を開く仕組みが隠れています。ゲームでは、四つの物はに頼まれて集めるクエストの目当てで、手に入れればすぐ次のクエストへ進みます。

けれど一つずつ読むと、四つの物は相反する力の二組の対で、最後の一つは敵の門の錨でした。[1:186,190]順に読んでいくと、マーティンが門を閉じるために門を開かせた訳が見えてきます。

雪の積もるブルーマの外の野に、炎の輪のように並んで口を開けたオブリビオンの門
ブルーマの外の雪原に開いたオブリビオンの門(Oblivion Remastered) 出典:UESP

ゲームで分かること
・四つの物:楽園への門を開く儀式には、の秘宝・の鎧・大いなるウェルキンド石・大いなるが要る
・在りか:秘宝はデイドラの祠、鎧はサンクレ・トールの地下墓所、大石はミスカルカンドの遺跡、印石はブルーマの外に開いた大いなる門の本塔の頂
・大いなる門:ブルーマの外に小さな門が三つ開いたあとに開き、本塔の頂の印石を外すと閉じる
・ブルーマの戦い:マーティンは町々から集まった兵の前に立ち、ともに戦った

日本語版は Great Sigil Stone を「偉大なる印石」と訳していますが、原文の Great は、大いなるウェルキンド石(Great Welkynd Stone)や大いなる門(Great Gate)と同じ語です。この連載では対が見えるように、「大いなるウェルキンド石」「大いなる印石」とそろえます。

『ザルクセスの神秘の書』はなぜ楽園への門なのか?

『ザルクセスの神秘の書』はマンカーが楽園を作ったときに自分を結びつけた本で、の言葉では本そのものが楽園への門であり鍵でした。[1:136]本を読み進めたマーティンは、こう打ち明けています。

“は楽園を作ったとき、口にするのもはばかる闇の儀式で、自分をこの本に結びつけた。だが、門は外からも開けられる。わたしが一時、自分をこの本に結ばねばならないから、たやすくはないだろう。だが、できると思う”
(Mankar Camoran bound himself to the Xarxes when he created his Paradise, using dark rituals which I will not speak of further. A gate can be opened from the outside, however. It will be more difficult, as I will have to temporarily bind myself to the book. But I believe it can be done.)

マーティンの言葉(Oblivion)より[1:136]

言い換えると、楽園は本と結ばれていて、外から門を開けるにはマーティンもマンカーと同じことを一時しなければなりません。たとえるなら、敵の城の合鍵を作るために、敵と同じ誓いを一晩だけ立てるようなものです。

その危うさは、本人がいちばん分かっていました。は、の秘術でこれほど危ういものは見たことがなく、夢の中でさえこの本から逃れられないとこぼしています。[1:136]

暖炉のある曇王の神殿の大広間で、机に本を広げて読むマーティン
曇王の神殿の大広間の机で本を読むマーティン(Oblivion Remastered) 出典:UESP

儀式は、デイドラの秘宝の形を呑みこんで、その力を解き放ちます。[1:139]マーティンは、渡された秘宝は長い年月で再び見ることはないと言います。けれど神の血のほうは鎧からほんの少し削り取るだけで、鎧そのものは残ります。[1:140,177]

楽園への門は、を取り戻すための門です。神々の贈り物である皇帝とアミュレットとが、デイドラを何千年も遠ざけてきた、とマーティンは言います。マンカーの企みが崩れたのはほんのわずかな偶然によってだった、とも言っています。[1:132]

すべての門を永遠に閉じるには、がドラゴンファイアを灯し直すしかなく、そのためのアミュレットは楽園にあるのです。[1:196]

マーティンはなぜデイゴンの本を読めたのか?

マーティンは、焼けたで見つかるまで、竜の神に仕える司祭でした。マーティンは若いころの見習いとしての秘術にのめりこみ、友を死なせて司祭になった人で、その過去が本を読む力と身を守る術になりました。の戦いの前に、マーティンは若いころのことを、こう打ち明けています。

“若いころ、わたしは魔術師ギルドの決まりにじれていた。仲間の見習いの多くもそうだった。我らはデイドラの魔術の謎にのめりこみ、禁じられた秘密に飢えた。知識と力が、我らの神だった。あとは察しがつくだろう。我らは深みにはまり、人が死んだ。友が死んだ。あの日々は、もう過去のものだ。だが、自分が愚かだったと知る苦い知恵にも、値打ちはある”
(As a young man, I grew impatient with Mages Guild restrictions, as did many of my fellow apprentices. We threw ourselves into the riddles of daedric magic. We hungered for forbidden secrets. Knowledge and power were our gods. You can guess the rest. We got in over our heads. People died. My friends died. I’ve put those days behind me. But the bitter wisdom that one has been a fool is not without value.)

マーティンの言葉(Oblivion)より[1:191]

魔術師ギルドは、の町々に支部を置く魔術師の組合です。決まりに飽きた見習いが禁じられた秘術に手を出し、友を死なせてその道を捨てた先が、神に仕える司祭の道でした。

本を受け取ったが「この本の邪な力から身を守る術をいくらか知っている」と言えたのは、この過去があったからです。[1:131]

灰色の司祭の衣を着たマーティン
司祭の衣のマーティン(Oblivion Remastered) 出典:UESP

過去の跡は、儀式に差し出す秘宝の中にも残っています。の王サングインが作った秘宝、サングインのバラを渡すと、マーティンは「これをまた目にするとは。一度ほんのしばらく持っていたことがある……遠い昔のことに思える」と言うのです。[1:165][2:1]

マーティンの机には、物語が進むにつれて本が増えていきます。その一冊『の扉』は、魔術師モリアン・ゼナスがオブリビオンの諸領域を巡った旅を、弟子が書き留めた本です。[3:20][4:25]

ゼナスは、禁じられた知識の集まる領域で研究の情熱に呑まれ、戻ってきませんでした。[3:33,38]本の頭には、「汝がオブリビオンに入るとき、オブリビオンもまた汝に入る」という言葉が掲げられています。[3:3]

は「司祭になったとき闇の術は捨てた。だが、運命の働きはここにも見える」と言いました。「神々は何をも善に変えうる」と相談に来た人に信心深く説いてきたが、いずれ自分でも信じられるかもしれない、とも言っています。[1:132]

その4 で見たとおり、マンカーもまたデイゴンの秘儀を読んで狂い、声が嗄れるまで叫んでさまよった男でした。[5:12]二人は若いころ、同じ闇の入口に立っていたのです。

四つの物はなぜ二組の対なのか?

四つの物は、の王の血と神の血、ムンダスの力を凝らした大石とを留めるという相反する力の二組の対でした。マーティンは、神の血を「一つ目の対」と呼び、大いなる印石を「大いなるウェルキンド石の対」と呼んでいます。[1:177,186]

四つの物と、その在りかは次のとおりです。

儀式に使う物何の力か在りか
の王の血の王の精髄から形づくられた秘宝の力[1:137]の教団の祠。物語ではアズラの祠
神の血人から神タロスになったの血[1:177]サンクレ・トールの地下墓所の、の鎧
大いなるウェルキンド石ムンダスの力を凝らした石[6:1]の都ミスカルカンドの跡
大いなるを開けておく石で、大いなる門の錨[1:190]敵がの外に開く大いなる門の、本塔の頂

表の上の 2 行が、1 組目の対です。デイドラの王は、自分の精髄から形づくった秘宝を地上に残すので、その王の教団をたずねれば手に入ります。[1:137,139]

雪の山の上に立つ、両手を掲げたアズラの像
シェイディンハルの北の山の上に立つアズラの像(Oblivion Remastered) 出典:UESP

表の下の 2 行が、2 組目の対です。星の向こうには魔力の源の世界があり、そのかけらはときに流れ星になって地上へ落ちてきます。[7:3]学者の本『天空からの魔法』は、ウェルキンド石をこう説明しています。

“ウェルキンド石(アルドメリスの語で「空の石」「天の石」、文字どおりには「天の子」)は、隕石のガラスを切ってした物で、魔力を蓄える器として働くらしい”
(Welkynd Stones [Aldmeris – “sky stone,” “heaven stone”; literally, “sky child”] are pieces of cut and enchanted meteoric glass which apparently act as storage devices for magical power.)

アーラヴ・ジャロル『天空からの魔法』より[7:7]

対になるは、まったく逆の所から来た石です。『境界の橋』によれば、印石の材料の石はの小さな虚にしか無く、の助けなしには採れません。[8:3]その石を清めてデイドラの王に差し出し、王が自分の印を刻むと、本当の印石になります。[8:8]

鎖に吊られた台座の上で、炎の柱に包まれて浮かぶ大いなる印石
大いなる門の本塔の頂の大いなる印石(Oblivion Remastered) 出典:UESP

天から落ちた石と、異界の虚から掘り出された石が、2 組目の対です。楽園は、ムンダスに生まれた男が、デイゴンの書いた本を使って作った世界でした。[1:132]そこへ通じる門には、神々とデイドラ、天と異界という両方の側の力をそろえて手に持つ必要があったのかもしれません。

神の血はなぜタイバー・セプティムの鎧だったのか?

神々は秘宝を残さず姿も見せないため、手に入る神の血は、人として生きたのちに神タロスとなったが地上に残した血でした。は二つ目の物を読み解いたとき、こう話しています。

“二つ目の物は、一つ目の対だ。神の血だよ。これはひどい難問だった。の王と違って、神々は秘宝を持たず、この世に姿を現さない。では、神の血をどうやって手に入れる? だが、が解いた。神の一柱となった、タイバー・セプティムその人の血だ。だけが覚えている秘密で、総長から総長へと伝えられてきた”
(The second item is the counterpart to the first: the blood of a Divine. This was a terrible puzzle to me. Unlike the Daedra Lords, the gods have no artifacts, and do not physically manifest themselves in our world. How then to obtain the blood of a god? But Jauffre solved it. The blood of Tiber Septim himself, who became one of the Divines. This is a secret remembered only by the Blades, passed down from one Grandmaster to the next.)

マーティンの言葉(Oblivion)より[1:177]

その鎧には、タイバー・セプティムの血が飛び散っていると伝わる、とクエストの日誌は書いています。[4:32]人として戦っていたころに流した血が、神になったあとも鎧に残っている、という言い伝えです。

緑に光る石の柱が立つ、サンクレ・トールの地下墓所の祭壇
サンクレ・トールの地下墓所(Oblivion Remastered) 出典:UESP

ただし、の「神々は秘宝を持たない」には、食い違いもあります。Oblivion の追加の物語 Knights of the Nine には、の加護を受けた聖戦士の遺品のように、神々が作ったと言える物が出てくるのです。[4:30]

マーティンがそれを知らなかったのか、儀式に使える形の物が無かったのかは、ゲーム内では語られません。

アンダーキングとは何者だったのか?

サンクレ・トールは、がを取り戻した城で、その地下墓所に鎧の祠がありました。Oblivion の中での正体は語られませんが、シリーズの古い作品ではタイバー・セプティムに仕え、裏切られた者として描かれています。

雪の積もる山あいに崩れた城壁が残る、サンクレ・トールの跡
雪の山あいに残るサンクレ・トールの跡(Oblivion Remastered) 出典:UESP

『伝説のサンクレ・トール』によれば、はこの地で奴隷の反乱を起こす神の啓示を受け、聖なる都を築きました。[9:3]のちに地下にはレマンの皇帝たちの墓が造られ、最後のレマン三世は王者のアミュレットとともに葬られました。タロス将軍はその墓からアミュレットを取り戻した、と本は書いています。[9:6,7]

その城は、裏切りで落ちた城でもありました。『サンクレ・トールの戦い』によれば、852年の真冬、裏切ったの魔術師が城の背後へ下りる山道と湖の幻の下に隠された入口を明かしました。タロス将軍はそこから城へ入り、とブレトンの軍を降しています。[10:7]タイバーはのちに、揺るがぬ決意は、レマン三世の墓のアミュレットの幻から得たと語りました。[10:10]

『伝説のサンクレ・トール』によれば、城はそれより前にも同じように落ちています。城の守りを作ったブレトンの師たち自身が、その秘密を攻めてきたノルドに売り渡しました。[9:5]サンクレ・トールは、何度も内からの裏切りで落ちた城だったのです。

Oblivion に出てくるのは、鎧の祠への通路にかかった呪いの名と、四人のうちヴァルデマールの「の邪な魔法」という言葉だけです。[4:21][11:26]シリーズ第一作の Arena(1994年)の手引き書は、アンダーキングをこう紹介していました。

“アンダーキングは、神話と伝説のなかを歩む謎の存在だ。じつはとても古く強いリッチだと言う者もいれば、魔法を使ううちに存在そのものが変わってしまった大魔術師だと言う者もいる”
(The UnderKing is a mysterious figure, walking through myth and legend. Some say he is actually a very old and powerful Lich, others that he is an Archmage whose very being has been somehow transformed by his use of magic.)

『The Elder Scrolls: Arena』の手引き書 より[12:2]

Daggerfall(1996年)では、アンダーキングの正体は、タイバーの魔闘士です。アークタスは、真鍮の巨像を動かすために自分の命を込めた宝石を作りましたが、タイバーに裏切られました。[12:12,13]

Morrowind の本『アークチュリアン異教』は、を古いの英雄ウルフハースとしています。その本によれば、タイバーに呼び出されたウルフハースは帝国の衛兵に待ち伏せされ、アークタスにを向けられました。[13:15,16]二つの話は、アンダーキングが誰だったかで食い違いますが、どちらもタイバーに裏切られた者です。

裏切られた者が、裏切った皇帝の遺物の祠を呪ったと読むと、話はよく通ります。けれど Oblivion は、アンダーキングがなぜサンクレ・トールを呪ったのかを語りません。祠へ降りた四人は、その皇帝に遣わされた、忠実なでした。[4:21]

霧の立ちこめる地下墓所の通路で、ひざまずく四人のブレイズの亡霊
鎧の祠へ続く通路でひざまずく、四人のブレイズの亡霊(Oblivion Remastered) 出典:UESP

大いなるウェルキンド石はなぜ一つしか残らなかったのか?

は、人の帝国より前にを治めていたエルフです。大いなるウェルキンド石はアイレイドの都ごとの魔法の源で、アイレイドが滅びたあと、魔術師や秘術使いに一つずつ持ち去られたからです。[1:179]学者の本『天空からの魔法』は、大石をこう書いています。

“大いなるウェルキンド石は、した隕石のガラスの、並外れて大きな塊である。学者たちは、古のアイレイドの都の中心にはそれぞれ大いなるウェルキンド石があり、都の魔法の源になっていたと考えている。……ただ、大いなるウェルキンド石を調べることはできない。知られているアイレイドの遺跡は、どれも大石を持ち去られ、残っている大石は一つも知られていないからである”
(Great Welkynd Stones are exceptionally large pieces of enchanted meteoric glass. Scholars believe that at the heart of each ancient Ayleid city, a Great Welkynd Stone was the source of the settlement’s magical enchantments. … In any case, research on these Great Welkynd Stones is impossible, since all the known Ayleid ruins have been looted of their great stones, and no examples of these great stones are known to survive.)

アーラヴ・ジャロル『天空からの魔法』より[7:8]

本は一つも残っていないと書きますが、は「一つを残してすべて持ち去られた」と言いました。[1:181]その一つが眠っていたミスカルカンドの最も深い所は、Morimath、「暗き住まい」という名の区画です。[14:2]

森の中に崩れた白い石の柱とアーチが残る、ミスカルカンドの遺跡
ミスカルカンドの遺跡(Oblivion Remastered) 出典:UESP

マーティンが自分の机にあると勧めた本『栄光と嘆き』は、が滅んだ訳を、こう結んでいます。[1:181]

“いや、彼らを滅ぼしたのは、自分たちの成し遂げたものへの驕りであり、自分たちの帝国は永遠に続くという、ひとりよがりの確信だった。それが彼らを失敗させ、忘却の中へと消えさせたのである”
(No, it was the arrogant pride of their achievements, their smug self-assurance that their empire would last forever, that doomed them to fail and fade into obscurity.)

アレクサンドル・ヘトラルド『栄光と嘆き』より[15:11]

は大石を受け取ると「古い物語が語るとおりの美しさだ」と言い、その美しさは恐ろしい力を隠す仮面だと続けました。[1:186]アズラの星を受け取ったときも、「どの物語も語るとおりの美しさだ」と言っています。[1:145]の秘宝とアイレイドの大石を、マーティンは同じ言葉で迎え、同じ用心で扱ったのです。

大いなる門とは何か?

大いなる門は、小さな門を三つ開いたあとに開く本隊の門で、町の城壁を砕く攻城兵器をへ出すための門でした。[1:191]の密偵の地下室で見つかった命令書は、その段取りをこう書いています。

“忘れるな。最初の三つの小さな門は、大いなる門の展開の前段にすぎない。……新しい門は、すぐにたやすく開け直せる。そして、ひとたび大いなる門が開けば、ブルーマは必ず落ちる”
(Remember: the first three Lesser Gates represent only the preliminary stages of Great Gate Deployment. … New ones can be quickly and easily reopened. And once the Great Gate is opened, the fall of Bruma is assured.)

ルマ・キャモラン『ジャールへの命令書』より[16:6]

攻城兵器は、都を丸ごと踏みつぶせる、の巨大な歩く戦車です。傷つけることができず、大いなる門が閉じると崩れます。どれほど早く門を閉じても、いつも門から半ばまで出てきています。[17:458][18:42]は、その恐ろしい力をで見たと言いました。[1:190]

炎と溶岩の世界で、門へ向かって歩く巨大な攻城兵器
大いなる門へ向かって歩く攻城兵器(Oblivion Remastered) 出典:UESP

攻城兵器は、ゲームの冒頭の場面にも出てきます。皇帝ユリエル七世が死の前に見た夢では、巨大な兵器が門へ向かって歩いていました。その場面で皇帝は「見よ、闇のなかで滅びが地を覆ってゆく」と語っていたのです。[19:31]皇帝が夢に見た滅びの姿が、の外で本物になりました。

大いなるは、その大いなる門を留める錨です。[1:190]四つ目の物は、敵が門を開かなければ手に入らない物だったのです。

雪原に崩れ落ちた、黒い攻城兵器の残骸
門が閉じたあと、雪原に崩れ落ちた攻城兵器(Oblivion Remastered) 出典:UESP

門はなぜ人の手で開くのか?

はの王だけでは開かず、こちらの世界の術者とデイドラの王が一緒に開く物で、の門も信徒の手で開いていました。門を開く技を論じた本『境界の橋』は、その手順をこう書いています。

“への門を開くには、術者は、その印石に印を刻んだデイドラの王と、呪文かで直に通じ合わねばならない。デイドラの王と術者がともに召喚の契りを唱え、術者が力を満たした印石を働かせると、印石はたちまち境界の障壁を越えて、その印が刻まれた場所へ運ばれ、ムンダスとオブリビオンのあいだに束の間の門が開く”
(To open a gate to Oblivion, the mechanic must communicate directly, by spell or enchantment, with the Daedra Lord who inscribed the sigil stone in question. The Daedra Lord and the mechanic jointly invoke the conjurational charter, and the mechanic activates the charged sigil stone, which is immediately transported through the liminal barrier to the spot where its sigil was inscribed, thus opening a temporary portal between Mundus and Oblivion.)

アリノールのカミロンウィ『境界の橋』より[8:9]

言い換えると、扉の鍵は向こう側の王が持っていても、錠を回す手はこちら側にあるのです。

の密偵ジャールへの命令書は「師は、の外でのお前の働きを喜んでおられた」と書き、「門を開ければ開けるほど輝かしい浄化は近づく」と続けています。[16:3]の門は、町に紛れた信徒の手で開いていたのです。

ジャールには、町の人のふりをするための台詞も作られていました。クエストの前に話しかけると「たいていは南で過ごしているけれど、山の空気のためにブルーマに家を置いているの」と答えるはずでしたが、この台詞はゲーム内では聞けません。[20:48]

ジャールの家の、卓のそばの床に隠された揚げ戸
ジャールの家の、地下室へ下りる隠れた揚げ戸(Oblivion Remastered) 出典:UESP

もっとも、が燃えていたころは神々の守りのおかげで、は束の間しかこの世界に来られませんでした。[1:132]火が消えたいま、門が学者の書いた決まりどおりに開いていたのかは、分かりません。

もまた、こちら側から門を開けようとしています。デイゴンの本に一時自分を結んで、楽園への門を開くのです。[1:136]違うのは、何のために、誰の同意で門を開けたかでした。

町々はなぜブルーマに兵を送ったのか?

が来ないなか、町の主たちは自分の町の門を閉ざすことしかできず、その門を閉じてもらってはじめてへ兵を割きました。の総書記官が軍団を送れないと断ったのは、物語で見たとおりです。レヤウィンのマリアス・カロ伯爵の目には、元老院はこう見えていました。

“あの方も、元老院のほかの者たちも、のことなど気にかけていない。属州のことばかりに躍起になって、我らには自分の身を自分で守らせているのだ”
(He and the rest of the Elder Council care nothing for Cyrodiil. They focus obsessively on the provinces, leaving us to fend for ourselves.)

マリアス・カロ伯爵の言葉(Oblivion)より[21:41]

一方のオカートは、新しい世継ぎが見つかるまで元老院だけで帝国は十分に治められる、と言っていました。けれど元老院の議員の多くは、急ぎの用で属州へ戻っていたのです。[22:44]皇帝のいない帝国は、町ごとにばらばらに門を閉ざしていました。

雪の積もったブルーマの城の前に張られた、援軍の天幕
ブルーマの城の前に集まった援軍の野営(Oblivion Remastered) 出典:UESP

町の主たちは、自分の町の外の門を閉じてもらうと、へ兵を送りました。レヤウィンの伯爵は「レヤウィンが帝国を支える務めを果たさなかったとは言わせない」と言いました。吸血鬼であるの伯爵ジェイナス・ハシルドアは「デイゴンは定命の民と同じく、わたしの同類も好まない」と言って兵を出しています。[21:49][23:25,52]兵を出したのは帝国の命令ではなく、門を閉じてくれた者への恩と、町が当面は安全になったからでした。[23:52][24:42]

は「ほかの町はみな見捨てたのか」と嘆いていましたが、すべての町が兵を送ると、衛兵隊長のバードは「これほど心が一つになったのは見たことがない」と驚いています。[25:262][26:124]北と南が織り合わさって強くなると言った女伯爵の町で、帝国はもう一度一つになったのです。[27:34]

それを織り合わせたのは冠ではなく、町々の門を閉じて回った一人の囚人と、自分の町の名を叫んで戦った兵たちでした。[1:193]

援軍を集めるのは、やってもやらなくてもよいクエストです。[28:12]集めた町の数で女伯爵の言葉は変わります。一つも無ければ「本当に独りで立つのか」、一つだけなら「民兵は農夫と店主で、兵ではない」と言います。[27:145,147]

マーティンはいつ皇帝になったのか?

は冠を戴いておらず名の上では皇帝になっていませんが、の戦いの日に皇帝として振る舞いはじめました。呼び名と言葉は、次のように変わっていきます。

  • 名と鎧
    大石を持ち帰ったあと、名がマーティン・セプティムに変わり、皇帝の胸当てや籠手をまとう[1:184]
  • の呼び方
    同じ日、ジョフリーが「陛下」と呼び、「ほかに道があるはずです」と止める[1:185]
  • 本人の言葉
    の策を明かしたとき、「皇帝になるのなら、そろそろ皇帝らしく振る舞う時だ」と言う[1:190]
  • 女伯爵への言葉
    礼拝堂で、「いまは堅苦しい礼は要らない。わたしはまだ皇帝ではない」と言う[27:137]
  • 戦いのあとの噂
    町の衛兵が「・セプティムは生得の権利を手にした」と言い合う[29:44]
タロスの礼拝堂で向き合う、マーティンと女伯爵ナリナ・カーヴェインと衛兵隊長バード
タロスの礼拝堂で女伯爵ナリナ・カーヴェインと衛兵隊長バードに話すマーティン(Oblivion Remastered) 出典:UESP

名の上では、マーティンは一度も皇帝になっていません。それでも策を決め、町の主に訳を話して信を求め、兵の前に立つという皇帝の務めを冠より先に始めていたのです。[1:193]その先のことは、また別の回で見ていきます。

門を閉じるためになぜ門を開いたのか?

皇帝ユリエル七世は死の間際に、の顎を閉ざせ、と言い残しました。[19:104]門を閉じる力を取り戻すには敵の門の錨を奪うしかなく、マーティンはその門をのように人に隠れてではなく、町の主に訳を話して開けさせました。

深遠の暁は、門を守るために決して身元を明かすなと信徒に命じ、町の人の知らないうちに門を開けていました。[16:6]は囚人に訳を話して女伯爵に伝えさせ、女伯爵は「用心していては、この戦には勝てません」と承知しています。[1:190][27:138]

門を開かせる時と場所を選んだのも、帝国の側でした。女伯爵は、支度が整うまで衛兵に門を閉じさせ続け、整ったところで閉じる手を止めさせています。[27:129]マーティンが囚人に言った「大いなる門が開いたら、すぐに動け」は、その時を選べたから言えた言葉です。[1:191]

門を閉ざせという父の遺言と、門を開かせた子の決断は、反対のことではなかったのかもしれません。

ここから先には、海外のファンの考察を含みます。ゲームの中の書物ではなく、YouTube の物語分析や批評の動画で交わされた読みです。それぞれの読みは原典で確かめてから並べ、結論は独自に立てます。

海外の読みは、大きく三つに分かれます。

  • 危うい賭け
    2024年の物語分析の動画は、の策を危うい賭けと見て、信仰を失いかけた司祭が、人に託されて指導者になる山場と読む[30]
  • 急な変わり方
    2023年の物語批評の動画は、の変わり方は途中が十分に描かれず急に見えると批判し、礼拝堂で女伯爵に頼む場面にも計算を見る[31]
  • 敵の計画
    2024年の回顧の動画は、デイゴンがわざとマーティンを生かし、とブルーマの惨状で追い込んだのではないか、と推し読みする[32]

個人的には、ここがこの章でいちばん大事な所だと思います。皇帝の力は命じる力だと思われがちですが、マーティンが皇帝として最初にしたのは命じることではなく、訳を話して判断を求めることでした。[1:190]

祠で信徒に持ち物を差し出させ、入信者の衣を着せたとは、正反対のやり方です。[33:30]

剣を掲げ盾を構えた、ブルーマの救世主の像
ブルーマの北の門の脇に建つ、ブルーマの救世主の像(Oblivion Remastered) 出典:UESP

閉じるために開いた門は、主のいない帝国が、人の手でもう一度一つになった門でもありました。

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さらなる解説

本題から外れるけれど面白い話を、三つ置いておきます。気になるものだけ開いてお読みください。

十五の秘宝 ──マーティンの一言

儀式に差し出せるの秘宝は十五あり、どれを渡しても儀式は進みます。は、秘宝ごとに違う一言を言います。[1:140]秘宝ごとの一言は、たとえば次のとおりです。

秘宝マーティンの一言
オグマ・インフィニウムこれの誘惑に勝てる者は多くない。今度は、わたしが試される番だ!
クラヴィカスの仮面クラヴィカス・ヴァイルの企みに、これ以上深入りしないのは賢明だ
のメイス恐ろしい武器だ。主の古い悪に染まっている。その死の力が、今度ばかりは善に向かうように
ナミラの指輪ナミラのこの形見が手もとから消えれば、よく眠れる。だが、我らの目的にはいい選択だ
ワバジャックいたずらの道具が消えて、せいせいする
ヴォレンドラングこのドワーフの鎚が、なぜ彼らの宿敵の力を宿すことになったのか。その話を、いま誰が知っているだろう?
マーティンの机 ──並んだ本

大広間のマーティンの机には、物語が進むにつれて本が増え、神の血を手に入れたころには二つ目の机も置かれます。[4:25]並ぶのは『の扉』と、見習いの錬金器、そして絵筆が二本です。

『避難民たち』は、その1 で読んだ、の愛人が産んだ子マンカーの生まれを書いた本です。[34:70]敵の師の生まれを書いた本が、皇子の机に載っていたのです。

ESO のブルーマ ──第二紀にもデイドラに襲われた町

ESO の時代の582年、はの名のもとにと信徒に襲われ、町の廃墟の上に闇の錨ダークアンカーが開きました。[35:9]も、同じころダークアンカーに地面ごと持ち上げられ、モラグ・バルの領域へ運ばれかけています。[36:4]

ESO では、ミスカルカンドの最後の王はモリマスという名です。[14:3]の動乱は、ブルーマがに襲われた最初の戦いではなかったのです。

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雪原に開いた門

433年、ブルーマの外の雪原で、は敵に開かせた大いなる門から、楽園への門を開く最後の一つを手に入れました。四つのうち三つは、アズラの祠とサンクレ・トールの地の底とミスカルカンドの闇の奥にあった物で、それぞれに古い物語がありました。門を閉ざしていた町々は兵を送り、マーティンは冠を戴かないまま、その兵の前に立ちました。

四つの物は、そろいました。楽園への門の向こうで、は何を待っているのでしょうか?

→ 【TES世界観解説】の動乱と二つの暁 その6|楽園(準備中)

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参考文献

物語と解説で引いた書物・台詞と、出来事の記録は、英語圏の TES 事典 UESP と The Imperial Library で読めます。訳はすべて当サイトによるものです。番号は解説の注釈の番号で、行はその出典の中で引いた文のある行です。

  1. マーティンの台詞(UESP「Martin」) 行131,132,136,137,139,140,145,165,177,179,181,184~186,190,191,193,196
  2. UESP「Sanguine Rose」(サングインのバラ) 行1
  3. セイフィジ・ヒッジャ『オブリビオンの扉』(The Doors of Oblivion。Oblivion の本) 行3,20,33,38
  4. Blood of the Divines(神の血を探す Oblivion のクエスト) 行21,25,30,32
  5. マンカー・キャモラン『深遠の暁・註解』第1巻(Mythic Dawn Commentaries 1。Oblivion の本) 行12
  6. UESP「Welkynd Stone」(ウェルキンド石) 行1
  7. アーラヴ・ジャロル『天空からの魔法』(Magic from the Sky。Oblivion の本) 行3,7,8
  8. アリノールのカミロンウィ『境界の橋』(Liminal Bridges。Oblivion の本) 行3,8,9
  9. マテラ・チャペル『伝説のサンクレ・トール』(The Legendary Sancre Tor。Oblivion の本) 行3,5~7
  10. 『サンクレ・トールの戦い』(Battle of Sancre Tor。Oblivion の本) 行7,10
  11. ヴァルデマールの亡霊の台詞(UESP「Ghost of Valdemar」) 行26
  12. UESP「Underking」(アンダーキング。Arena の手引き書と Daggerfall の記述) 行2,12,13
  13. 『アークチュリアン異教』(The Arcturian Heresy。Morrowind の本) 行15,16
  14. UESP「Miscarcand」(ミスカルカンド) 行2,3
  15. アレクサンドル・ヘトラルド『栄光と嘆き』(Glories and Laments。Oblivion の本) 行11
  16. ルマ・キャモラン『ジャールへの命令書』(Jearl’s Orders。Oblivion の書き付け) 行3,6
  17. UESP「Siege Crawler」(攻城兵器) 行458
  18. Great Gate(大いなる門の Oblivion のクエスト) 行42
  19. 皇帝ユリエル・セプティム七世の台詞(UESP「Emperor Uriel Septim」) 行31,104
  20. ジャールの台詞(UESP「Jearl」) 行48
  21. マリアス・カロ伯爵の台詞(UESP「Count Marius Caro」) 行41,49
  22. 総書記官オカートの台詞(UESP「High Chancellor Ocato」) 行44
  23. ジェイナス・ハシルドア伯爵の台詞(UESP「Janus Hassildor」) 行25,52
  24. アンブラノクス伯爵夫人の台詞(UESP「Countess Millona Umbranox」) 行42
  25. ジョフリーの台詞(UESP「Jauffre」) 行262
  26. バードの台詞(UESP「Burd」) 行124
  27. ナリナ・カーヴェイン女伯爵の台詞(UESP「Countess Narina Carvain」) 行34,129,137,138,145,147
  28. 「ブルーマに援軍を」(Allies for Bruma。Oblivion のクエスト) 行12
  29. 町の噂(UESP「Rumors」) 行44
  30. 「Is Oblivion’s Story Actually Good?」(YouTube、2024年)
  31. 「A Narrative Critique of The Elder Scrolls IV: Oblivion」(YouTube、2023年)
  32. 「Oblivion Retrospective: The Last Good Bethesda Story」(YouTube、2024年)
  33. ハロウの台詞(UESP「Harrow」) 行30
  34. ジェロス・アルブリー『避難民たち』(The Refugees。Oblivion の本) 行70
  35. UESP「Bruma」(ブルーマ。ESO の第二紀の記述) 行9
  36. UESP「Cloud Ruler Temple」(曇王の神殿。ESO の第二紀の記述) 行4

物語の場面は、次のクエストと台詞からつないでいます。

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よくある質問

ブルーマの救世主の像は、どんな姿になる?

像の姿は、戦いのあと、のいる所へ入ったときに決まります。そのとき持っていたいちばん良い防具と武器の姿になり、身につけていない物でも選ばれるので、姿を選びたいときは、余分な装備を置いてからマーティンに会いましょう。[18:45,46]

大いなる門の中には、時間の決まりがある?

大いなる門に入ると、15 分の決まりがあります。過ぎると攻城兵器がへ出てマーティンが死に、やり直しになります。画面に出る残り時間は 1 分ずれていて、実際には 1 分多く残っています。[18:18,19]戦いのあいだに戦場を離れても、15 秒ほどでマーティンが死にます。[1:194]

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PCゲームの攻略と、MODの作成・日本語化、ロア(世界観)の解説を書いています。Morrowind の完全日本語化、TES のロア解説、Baldur's Gate 3 や Fallout: New Vegas(TTW)の日本語化、FF14 の見た目系ツールの解説など。MOD や翻訳ファイルの不具合は、各記事のコメント欄からどうぞ。

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