第一紀、レマン・シロディールの帝国と戦ったアカヴィリの伝令が、最期の日々を書いた日記の訳。Oblivion の本。
『アカヴィリの日記の訳』
本
『アカヴィリの日記の訳』の詳しい説明
アカヴィリの伝令ジャフェリは、補給が一か月遅れるという知らせを刻んだ石板を、ペイル峠の砦へ一人で運んでいた。竜の爪岩や、北を指して国境を見張る「センチネル」の像を目印に進み、途中で仲間の伝令シラジと出会う。狼の群れに襲われて深い傷を負い、逃げ込んだ大蛇の小道で巨大な人のような怪物に襲われてシラジは死に、ジャフェリも背骨を砕かれて動けなくなる。日記は、知らせを砦へ届けてほしい、妻のヴァタにいつまでも愛していると伝えてほしい、と結ばれる。
『アカヴィリの日記の訳』の全訳
三日目
重い心と震える手で、この新しい記録を書いています。グレイ・リッジの我らの駐屯地を発ってから、もう何日も、道でほかのだれにも会っていません。道はさびしく、危険です。この先の険しい道に備えて、食料を少しずつ分けて食べています。レマン・シロディールの軍がペイル峠の我らの本陣を見つけていないかぎり、旅はさほど何事もなく終わるはずです。正直に言えば、不安です。この命令を砦へ運ぶ役に選ばれたのは名誉なことですが、私を一人で行かせるのは、計算ずくの賭けです。気がかりなのは自分の命ではなく、命令の中身の大切さです。もしこれが何かのはずみで失われれば、砦は補給が一か月遅れることを知らずにいることになります。それを知らなければ、砦は物資が減っていくなかで、前線での攻めを続けると決めるかもしれません。彼らは、補給がもっと早く届くと当てにしているのです。この知らせだけは、必ず届けなければなりません。安全のために命令を刻んだ粘板岩の板が、私の身を重くします。それは、体の重さ以上の荷を背負っていることを、いつも思い出させます。
七日目
二日かかって、ようやく竜の爪岩に着きました。この巨大な岩の姿は、ありがたく、元気の出る眺めです。大きな岩は、北から手を伸ばし、レマスの軍の心臓を打とうとしているように見えます。ちょうど、我らの軍がこの一年の大半、そうしてきたように。この道では、まだだれにも会っていません。細い道をまっすぐ西へ進むうちに、戦の中で仲間たちがどうしているか、知らせをくれる人に会えればと願っています。
八日目
西へ曲がりくねって進んだ末に、「センチネル」が見えるところまで来ました。何年も前に、名も知られない作り手が据えた巨大な像です。像は北を指して見張りに立ち、帝国の国境を越えようとする者に、越えられるものなら越えてみよと挑んでいるかのようです。我らがまさにこの像を、彼の領地へ入る目印に使っていると知ったら、レマスはさぞ怒ることでしょう。昨夜、山の狼の群れに襲われた、我らのもう一人の伝令に出会いました。彼の脚はひどく傷ついていましたが、持っていた薬の小瓶で、どうにか手当てすることができました。彼の名はシラジといい、補給を増やしてほしいと頼むため、ペイル峠から来たところでした。こうして出会った皮肉について話し合い、彼は、自分の役目はもう要らないのだからと、私と一緒に砦へ戻ることにしました。日が暮れたら発つつもりです。
九日目
残った力の多くを使って、これを書いています。「センチネル」から北へ向かう途中、我らは狼の群れに襲われました。おそらく、シラジを襲ったのと同じ群れです。彼は噛まれたあと、いったん狼たちを追い払っていましたが、血の味を覚えた群れは、もっと数を増やして戻ってきたのです。背中合わせに戦い、シラジと私は少なくとも 8 頭を倒しましたが、その前に一頭が私の腹を引き裂き、ひどい傷を残しました。群れを追い払うことはできましたが、私は今ひどく血を流していて、持っていた薬はただ一つ、シラジに使ってしまいました。我らは大蛇の小道の入り口まで北へ進み、中に身を隠すことに決めました。またすぐに書くつもりですが、今は眠らなければなりません。とても、とても疲れました。
十一日目
これが、私に書ける最後の記録です。我らが大蛇の小道に入ってから、もう一日近くになります。天気と狼から身を隠すためでした。予想していなかったのは、大蛇の小道をすみかにした生き物たちでした。はっきりとは見えませんでしたが、彼らは巨大で、力が強かった。そのうちの一匹がひと振りでシラジの首を落とし、彼は即座に死にました。巨大で醜い、人のような生き物が三匹いました。私は逃げようと、暗いトンネルの中を、できるかぎりの速さで走りました。しかし逃げる途中、一匹が投げた大岩が、私の背にまともに当たりました。小さな穴を這って抜け、のろのろとした怪物たちからは逃れましたが、すぐに、もう這うことしかできないと気づきました。大岩が背骨を砕いたのだと思います。もう脚の感覚がありません。狼に襲われたときの傷も開き、たくさんの血を失いました。私が行けるのは、ここまでのようです。私は役目を果たせませんでした。この命令を、ペイル峠の砦へ届けることができませんでした。すぐ近くまで来ているのに、もう歩けず、力も抜けていくので、何リーグも離れているのと変わりません。もし仲間の伝令か兵士がこの日記を拾ったなら、どうか手遅れになる前に、命令を砦へ届けてください。そして、どうか妻のヴァタに、ジャフェリはいつまでも愛していると伝えてください。
※ 原文では、帝国の指導者の名が 2 か所「レマス」になっています。三日目の記録にあるレマン・シロディールのことです。










